脚本一覧

1.また明日

長友佑都の小学校時代の同級生が三芳小学校の体育館に集まったのは、2016年6月4日の土曜日のことだ。

 「あいつ今何してる?」という番組取材のため、僕は東京から三芳に帰ってきた。どういった番組かといえば、佑都が僕たちのことを言ったり、昔の侑都について僕たちが言ったりし合う番組だった。

 僕が着いたときには、体育館に同級生3名とスポーツ少年団でサッカーを指導をしてくださった杉コーチがいた。

 みんなと話すうちに昔あったことが昨日あったことのように思い出された。

 あの楽しかった、いやちょっと変わった小学校3年生のころを。

長友  おい、みんな来い。

みんな (集まる)

長友  大事な話じゃ。

僕   ほりゃっ、楽しみ、どんな話じゃ。

長友  今から、好きな女は誰か言い合うぞ。

田坂  馬鹿らしい、小学校3年生で好きな女なんかおるか、くだらん、遊びに行こ。

長友     もう一度、言うてみい。僕(武田の肩をたたき)お前はまだ子ども、いずれわかる、この言葉の重みが。

長友  芳知、お前は誰ぞぅ。

僕   大きい声じゃ言えないが、小さい声では聞こえないので(叫ぶ)智子。

みんな (吹っ飛ぶ)

長友  芳知、お前、お前、びっくり、ものすごいセンスある、センスの塊じゃ。

加地  佑都は誰じゃ。

長友  絵里香じゃ。

森山  おうっ、いいことに運がいい、絵里香が来よる。

田坂  あこがれの絵里香様じゃ、絵里香、長友がお前のこと、す、(長友のけりが入る)

長友  悟空、このベジータを倒すには、3年早い、わっはっはっ。

山本  佑都君、何しよるん。

加地  さっきまで、好きな人について話してたんじゃ、絵里香は誰が好きぞ。

みんな 誰が好き。(絵里香を囲む)

山本  そんなこと、そんなこと。

みんな そんなこと。(近寄る。)

山本  言えない。(みんな吹っ飛ぶ。)だって、そうでしょ、今わたしたちには、しないといけないことがいっぱいよ、勉強でしょ、運動でしょ、ああっ、忙しい、  佑都君もそう思わない。

長友  はい、そうですね、みんな、僕たちにはやることがいっぱいだ、愛なんて語る暇はない。

僕   さすが、佑都君。(両手を組み、大きくうなずく。)  

山本     さあっ、いきましょ。

女たち いきましょ。

  長友は僕たちには異常に強かったが、絵里香には弱かった、いや弱すぎた。だってスポーツ少年団のサッカーに入った動機が絵里香にもてたいから、しかも小学1年生の ガキが。

  でも、そんな佑都を僕は好きだ。そして、なぜかいつも佑都をよいしょしている。それが自然であり、当たり前の僕のスタイルだった。

 ある日、僕の家でチョロQ自慢大会をした。

長友  おい、みんな持ってきたか、見せてみい。

僕   わしのは、これじゃ、美しすぎるぜ。

長友  ぷうー、なんぞ、これは、へいかじゃ。

僕   ふふっ、陛下か、僕のチョロQが天皇陛下につける陛下とは。

長友  違う、勘違いすな、お前のは屁、以下じゃ言うて言うただけじゃ。わしのこれと比べてみい。

僕   確かに、これはすごい。

長友  良太、お前の見せてみい。

加地  びっくりすなー、これじゃ。

長友  確かにすごいが、ひかえおろう、これ、水戸黄門じゃあなく、見て肛門。(しりを向ける)間違えた、これじゃ。

加地     う、うっ、うっ、負けた、黄門様あー。(正座し、両手を大きく同時に上げた後、下げ頭を床につける。)

長友  ほれじゃあー、大二郎の見せてみいっ。

森山  僕のはたいしたことないよ。

長友  うん、これはたいしたことはない、これ見てみいっ。

森山  ああっ、すごい、僕のと、交換してや。

長友  いっ。

森山  いいの。

長友  やじゃ。

長友  今度は、お前のを見せてみいっ。

田坂  わしのはすごいぞ、父ちゃんはお金持ち、母ちゃんもお金持ち、裕福な共働きの家で生まれたこの僕の最高の贅沢作品、これじゃ。

長友  確かにすごいが、これにはかなわんはずじゃ。

田坂  わしのがすごいわい。

長友  芳知、どっちがすごい。

僕   (よく見るふりをする。)確かにどっちもすごいが全体的な評価は佑都の方が上じゃ。

田坂  がくっ。

長友  おいっ、気にするな、上には上があるんじゃ、わ、はっはっは。今日はもう予定があるから、また、明日。

みんな また明日。

  僕たちは、いつもまた明日と言って別れた。また、明日会うことを当然のことのように思っていたからだった。

 佑都のすごいのは、やっぱりサッカーだった。スポーツ少年団3年生以下の部で勝たしてくれる、佑都一人で。当たり前のことだが、西条一のサッカー選手になることは難しいことだ。愛媛県一のサッカー選手になることは、もっともっと難しい。でも佑都はなった、世界の長友に。その長友に勝てる小学生がこんな田舎にいるはずがなかった。

  今日も優勝することができた。みんなうれしそうに、「また明日」と言って別れた。

長友  ただいま。

母   おかえり、どうだった。

長友  優勝したよ。

母   おめでとう。

長友  どうしたの、みんな暗い顔をして、優勝したんだよ。

母   お座り。(弟、姉もきちんと座る。)佑都、あなたに言わないといけないことがあるの。姉の麻歩と弟の宏次郎には、もう言って納得してもらったの。

長友  何、何が。

母   私たち、お父さんと別れて、冬休み中にこの家を出て、西条にかわることにしたの。

長友  なんで、急に、そんなこといやじゃ。姉ちゃん、母ちゃんに言うて、いやだって。 

麻歩  (首を横に振る。)

長友  わしは、いやじゃ、いやなんじゃ。

麻歩  佑都、それ以上言うと、お母さんを困らせるのよ。

長友  でも。

母   もう無理。お母さんもみんなのために一生懸命頑張ったけど、もう無理なの。

長友  宏次郎、お前はどうじゃ。

宏次郎 僕はお母さんについていく。

麻歩  私も。

長友  何で急に、こんなことが、いやじゃ。

麻歩  佑都、お母さんの深い悲しみが分からないの。お母さんがどんなにつらい思いをして決断したのか。

長友  う、うっ、うっ、分かった、でも一つだけ約束して、友達に、いや誰にも転校することを言わんといて。

母   それでいいの、あれだけ仲のよい友達と最後の別れをしなくていいの。

長友  友達の前では最後までカッコイイ佑都でいたい。

麻歩  それでいいのなら、私も黙って去る、でもつらい。

母   ありがとう、ありがとう、佑都、麻歩、宏次郎。ごめんね、ごめんね。(静かに泣く。)

麻歩  (少し大声で泣きながら)お母さん

宏次郎 (泣きながら)お母さん

佑都  (大声で母に駆け寄り)かあちゃーん。

   こうして佑都の転校が決まった。僕たちは、佑都が転校することを知るはずもなかった。

 2学期も終わり、冬休みになっていた。そんなある日のことだった。僕の家に友達が遊びに来ていた。

長友  芳知、お前にこれやるわ。

僕       え、あのチョロQじゃない。

長友     良太、お前にもやるわ。

加地  いいの。

長友  大二朗、お前にも。

森山  お返しは。

長友  気にするな、かまわん、わしは太っ腹じゃ。そして、お前には、これじゃ。

田坂  ありがとう。

長友  じゃあな、冬休み中、旅行に行くかもしれん。じゃから、しばらくはおらんと思う、また今度。

みんな また明日。

 このころ、急に佑都が優しくなっていた。でも、なぜだかは分からなかった。

 佑都以外は、もう西条に引っ越しをしたが、佑都だけは、1月6日まで、じいちゃんとばあちゃんと三芳で過ごした。とうとう冬休み最終日、1月7日を迎えた。   この日、みんなで佑都の家に遊びに行った。

僕       明日から学校じゃから、もう旅行から帰ってきてるはずじゃ。

森山  佑都君、遊ぼ。

田坂  何かおかしい、自転車も何もかもない。

加地  確かにおかしい。

僕   うちの父ちゃんなら、何か知ってるはずじゃ。

みんな 走った、走った、リカーズ武田に。

僕   佑都がおらん、おらんのじゃ。

功   知っている、分かってる。

みんな 何があったん。

功   みんなに黙っているように言われたけど、もう教えてもええぐらいじゃ。佑都は西条に転校した。

僕   佑都が転校。

みんな 佑都が。

僕   あれだけ仲が良かったのに、なんでこんな大事なこと言うてくれんかったん。(こぶしで床をたたく。)あっ、そうか、そうだったんか、あの時、ごめん、ごめんね、気づいてやれんで、チョロQをくれたり、また今度と言うたり、佑都は最後の別れをしとったんじゃっ、いつもそばにいた僕がこんなことにも、 ごめんね、う、うっ、うっ、つらいよー、寂しいよー。

みんな (一人ずつ、佑都と言って、泣きながら座っていく。)

 佑都が去ってしまった。

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2.かさこじぞう

  みんなの心にのこる思い出を作りたいと思い、この作品を作りました。

  くるしいとき、かなしいときはからずやってきます、でもあきらめないで。だれにもりかいされないでなやむときもあるでしょう。きっと、みんなのためにがんばって  いれば、だれかが分かってくれます。きぼうある明日をしんじて、ゆめにむかって、はばたいてください。

名前 (           )

 

このお話は、むかしむかしのお話です。むかし、むかしのずっとむかし、じいさまとばあさまが2人なかよくくらしていました。

 いつもいつもじいさまは、ばあさまのことだけを考えてくらしました。やさしくてたのもしいので、 ばあさまは毎日がしあわせでした。

 でも、そんななかよしの2人でしたが、ひとつだけこまったことがありました。それは、びんぼうなことです。その日、その日をやっとくらしていました。

じいさま うーん、うーん、あさっては正月じゃ。正月ぐらい、かみだなの神様におもちぐらい、かざってみたいのぅ。

ばあさま さすが、じいさま、ええことをいう、そうしましょう。

じいさま ばあさま、さんせいしてくれるか。

ばあさま はい。(はく手をする。)

じいさま ところで、どうやったらおもちがかえるかのぅ。

ばあさま そうですねぇ。

じいさま (手を1回思い切りたたいて)そうじゃ、何かを売って、そのお金で買うとか。

ばあさま そりゃあっ、すばらしい、すごすぎる、さすが、じいさま。

じいさま 売るものって、何かあるかのぅ。

(考えたふりをしながら2人、頭を下げていき、じいさま、地面に頭をうちつけ、いたそうに飛び上がる。)

じいさま ひらめいた、ばあさま。雨や雪から頭を守るかさを作って売ったらどうじゃ。これからは雪がいつふるかもしれん、ていねいにあんだかさなら売れるぞ。

ばあさま さすが、じいさま、いつも頭がいい。さあっ、作りましょう。

 

  こうして、夜中にもかかわらず、じいさまもばあさまもまじめなせいかくでしたので、いっしょうけんめい、ずっと作り続けました。

じいさま ばあさま、いつももこんなにくろうさせて、ごめんね。まずしいばっかりに。

ばあさま 何をいうのですか、いつもじいさまと一しょだからうれしいですよ。 

じいさま ありがとう、ばあさま(少し間をおく)、ばあさま、やっとわしは、3こできた。

ばあさま わたしも2こ作りましたよ。

じいさま 2つと3つ合わせると、うーん……。(手を曲げながら、考えたふりをし、うんうん、うなりながらじいさまは考えている。)

ばあさま 5つ。

じいさま す、すうっ、すごい、ばあさまには、いつもおどろかされる。あまりにも計算がはやすぎる。しかたない、ちょっと計算れんしゅうをするか。九九の2の段を いっててみるか。にいちが2、ににんが4、ちょととばして、にご10、にろく12、にしち14、にはちはそば,そばと一しょににくは、にくくいたい。

ばあさま ちがう、ちがう、じいさま、にはち16、にく18ですよ、いやだ、じいさまったら。

じいさま ほうかそうやった、2つもまちがえてしもたのぅ、わしも年じゃ。わっ、は、は、は、は、(急に声をかえ)うん、ううん、きょうは、はれるかのぅ。 

 こうして、正月の前の日である12月31日、大みそかの朝を迎えました。

じいさま ばあさま、行ってくるぞ。

ばあさま じいさま、市場にかさを売りに行くのにわすれ物はありませんか。ねんのためにふきんをもっていっといてください。何かの役にたてるかもわかりませんから。

じいさま ありがとう、ばあさま、ほら、ちゃんとかさを持ってるぞ。ほやった、大変な忘れ物があった、ばあさまにチュッじゃ。

ばあさま    まあっ、はずかしい、でもうれしいこと、じいさまったら。

 こうして、じいさまは大切にかさをかかえ、市場へ向かって歩いて行きました。

じいさま そうであった、いいこと思いついた、市場に行くと中に、わしとこのはかがあるから、せんぞのおはかまいりをしていこう。入り口の六地ぞうさまにもごあいさつをしてと。(歩く)こりゃあっ、びっくり、六地ぞうさまぁー、大変なことが、鳥のふんがついている、おや、このお地さまには、こんなによごれて、こっちもじゃ、 わあっきたない、さあて、いつきれいにするの。今でしょ。そう、これでは、よい正月はむかえることはできない、せめて正月はきれいなお体にしたげなくちゃ。

    

 じいさまのびっくりようはただごとではありませんでした。心をこめて、心をこめてばあさまがわたしてくれたふきんで、六地ぞうさまやせんぞのおはかをふきつづけ ました。

 さて、じいさまがふいていた六地ぞうとは何でしょう。大きなお墓の入り口には、六つならんだ石でできたほとけさまがあります。このほとけさまのことを六地ぞうさまといいます。死んでからいく6つの世界で、その中でまちうけるくるしみを消してくれるほとけさまのことです。六地ぞうを大切にすることは、元気で生活しているじいさまやばあさまにとっても、そしてごせんぞさまにとっても、ごりやくがあり、苦しみやかなしみをとりのぞいてくれるといわれています。

じいさま  やっと終わった、ふうっ、つかれた、おやまあっ、だいぶ時間がたってしまった。はやく売りに行かないといけない、でも、これが、わしからのは六地ぞうさまへのおもてなし(右手を使いながらゆっくりという。)、おもてなし(はやくいい、手を合わせた後、礼をする。)

 あまりにも心をこめて、みがきすぎたので、時間がだいぶたってしまいました。市場への道のりも長く、市場へついたときには、お昼もだいぶすぎていました。

じいさま  かさはいかがですか、じょうぶなかさはいかがですか。

となりの人  ぷっ、ぷぷーっ、今ごろ来て。せっかく売りに来たのに、はっきりいうと気のどくやけど、いわなかったら分からないと思うから、はっきりいおう。       もう売れんよ。

じいさま  (後ずさりしながら)あなたは、よげんしゃか。

となりの人 朝から昼間までは、おきゃくさんは、いっぱい来たけど、今からは家で夕方の準備や明日の準備をしないといけないから、おきゃくさんは来ないと言ってる だけ。わしももう帰ろうと思ってる。

じいさま  では、もう売れないと、ついてなかったなあっ。

A     かーつ、ついてないのは、お前のせきにん、ついていいのはうん、ついていけないのは、うんこじゃあっ、分かったか。

B     どうもすみません、ごめんなさい、ゆるしてくださいよ、この人、だれにでもせっきょうするの、ほら、行くわよ、行きましょう。

C     わしらもそろそろ帰るじゅんびをするか。

隣の隣の人 お先に、帰ってこうわい。

D     わしも帰ろう。

じいさま  来るのがおそすぎた。おー、まい、ごっどよ、かみにみはなされたものは、みずから手でうんをつかめというが、神さまよ、わしをみはなしてしまうとは。(両手を合わせ、かたひざをつく。)

 市場に行くのがおそかったため、一つも売ることができませんでした。じいさまはこまりました、こまりました、でも、じいさまは、あったことを、本当のことを売れなかったことをすなおにばあさまにいおうと思いました。

 考えれば考えるほど、じいさまはばあさまにわるくて、元気が出ません。あんなにおそくまで、2人で作ったこと、ばあさまに、もちひとつ食べさすことができなくなってしまったこと、しぜんとなみだがこぼれました。

じいさま   わしは、ほんとうは、もちをかみだなにかざるというより、ばあさまを喜ばしたかったのじゃ、わしは食べなくても、ばあさまにもちを1こでも食べてもらいたかった。でも、それがかなわなかった、わしのせいで、終わってしまった。ばあさま、きたいしてるじゃろぅ。悪いことをしてしもたのぅ。ばあさまがよろこぶ顔がみたかったのに。

 ゆっくりとゆっくりと歩いていると、おはかまで来てしまいました。

じいさま  六地ぞうさまのところまで来たか、よかった、本当にきれいになった、よかった、よかった、あっ、そうじゃ、これはもういらん、六地ぞうさまも明日は正月をむかえる、六地ぞうさまにもっとおもてなしをしたら六地ぞうさまも喜んでくれると思う。そうじゃ、そうじゃ、このいらないようになったかさをかぶらせてやろう。(5たいにかぶらせる。)さいごのお地ぞうさまにはぶらせるものがない、いやっ、あった、あった、わしのかぶっている手ぬぐいが、ちょっとよごれていますがゆるしてください。六地ぞうさま、少しだけ、わしのねがいをきいてください、わしはええけど、ばあさまに、ばあさまにいいことがありますように。

 こういった後、「ばあさますみません」と、あやまりました。そして、家に向かってかえりはじめました。ばあさまには悪いことをした思いはありますが、六地ぞうさまがきれいになったことですこしは心がはれました。

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3.寿限無

げきは おもしろい たのしい

じぶんが おもしろくえんぎすれば

みるひとも よろこんでくれる

げきはクラスみんなで たのしみながらつくる

たのしいげきを つくるぞ

おー

                                        

  落語で有名な寿限無に挑戦しましょう         

  そして、自分の名前のゆらいについて聞いてみてください。

名前(              )

1   ずっと、ずっとのです。あるに男の子が生まれました。生まれた子にせになってもらいたいと考えた夫婦は、幸せになるための名前をつけることに悩みます。  ここからが始まります。

みんな (一人が紙を持つ)

2  (その紙で)この寿限無にはどんながあるのでしょう。とは幸せのことです。げむとは、にくというで、これを合わせると、いつまでも幸せですよという意味です。

 さて、話をめたいと思います。

女1   きなあなた、この子の名前どうする。

男1      どうするもどうしようもない、早くつけんと。

女2   あたし、大好きなあなたをいっつもいつも思い出せるようなロマンティクなすてきな名前が良いわ。

男2   みよちゃん、なんとうれしいことを言う。う、う、う、うっ(き出す)。

女3   (ぶりっこをしながら)どうしたらいいのかしら、どうしたらいいの、わたし、困っちゃう。

男4   (をして)みよちゃん、ぼくこそ、っちゃう。

女5   あたしがつけるのだったら、大好きなあなたの名前がたれだから、たれが一番でたれいちって、どう。

男5   たれいちでもいいけど、たれにこえる、ちなみにうちのばあちゃんじゃがにそうじゃったのぅ。でも、うれしい、うれしすぎるぜ、う、う、うっ、あっ鼻水が、じゅる、じゅる、愛してる、ぶちゅう。

女6   わたしは2倍返し、ぶちゅう、ぶちゅう。それだけでは止まらないの4倍キッスもあるわよ。ぶちゅう、ぶちゅう、ぶちゅう、ぶちゅう。

男6   はえっ、ひえっー、すごすぎる。

女7   そうか、何でもよく知っている物知りの人に聞けば。

男7   分かった、それがいい。何で今まで気づかなかったんじゃ。じゃ、行って来る。

女8   どこへ行くのよ。

男8   決まっている、ちょっと、墓まで。

女9   どうしてお墓へ行くのよ。

男9   死んだひいじいちゃんに聞くのよ、ひいじいちゃんは自慢じゃが、この村一番の物知り男と言われていたんじゃ。

10      あなたって天才、すごいアイディア、でも死んだ人間に聞けるの。

10   そうか、そうだったのか、今までいくら墓に話しかけても返事一つしなかったのは。

11   そうだ、わたし、ひとっ走り行ってくる。

11   どこへ。

12   さんよ、こののりでしょ、あなた、子どもしっかり見ててね、なるべくいで帰ってくるから。

3  そう言った、おっかあのおみよちゃんは、走った、走った、(ナレーターが思いつきでこけた、そして立ったとかなことを言い、おみよちゃんはその通りする)  まるで走れメロスのように。

13   子どものためなら、何でもするよ。くぞ、着くぞ、お寺はもうすぐ。あれは、、和尚。

和尚   あの言い方ならふーん、ふーん、犬のふん、むし、むし。(する。)

14   ちょっと無視されたかしら、いをえて、かっこよすぎる和尚さまー。

和尚1  しっかりと聞こえましたよ、わたしのことを正しくするのが。

15   でステキな、和尚さまあっー。

和尚2  れるなあー、あっ、おみよちゃんだったのか、どうかしたのか、ねん、おーい、お。

珍ねん1   へーい。

和尚3  何か、おみかな。

16        はっきり言いますが。

和尚4  なにぃ、はっきりと。

17   和尚さまがこののい人でしょ。

和尚5  しっ、なぜ、なぜそれを知っている、それはのトップシークレット、じゃ。られてはいけないことなんじゃ。じゃが、小さい声では聞こえないからからぶぞ、 そのり。

18   やっぱり。

和尚6   はっきり言って、この世で偉いのは二宮君かわしかじゃ。

19   二宮君って、だれですか。

和尚7  金ちゃんよ、金ちゃん、知らんか。

20   金ちゃんラーメンですか、けど、この時代にはまだないはず。

和尚8  違う。二宮君ちゅうんは、金次郎といって、のにある、んでも(きながら)かわいそうにやりまきをわされて、(ゆっっくりと大きく首を振りながら)たされとるがきじゃ。

21   あのですか。

和尚9  さよう、このでいのはながら、この二人だけじゃ。

22   あっ、という、やっぱり、来たかいがあった。

和尚10  ところで、何のじゃ、、子どもができて幸せな人が。

23   お願いします、お願いします、あたしの子の名前を付けてください、この村一番のかっこよくて、すてきでスタイル、その上イケメンの和尚さまー。

和尚11  どうしてそれが分かる、わたしのことがに分かるんじゃー、えっへん今日はサービスのバーゲン、おみよちゃんのためならこの世でい名前を付けてしんぜよう。

珍ねん3 どうぞ、お茶でも、ごゆるりと。

和尚12  まあっ、じっくりとじゃ。

4 こうして、ほめられたはのがにくなってしまいました。それは良かったことでしょうか、はたまた、とんだ迷惑を引き起こすのでしょうか。

24   どうか、この子の将来が明るくなるようなめでたい名をおいします。

和尚13  うんにゃ、かんにゃ、ちんにゃあっ、どうせ、へをこぐならプープーとおひりスースーそこべはなおくさい、ちんたらちん、ひらめいた、どうじゃ、というのは。

25   さてさて、聞いたことのない名ですが、どういうでしょう。

和尚14  つまり幸せが長く続くちゅう意味じゃ。

26   ありがとうございます、わが子の名前はにします。

和尚15  パオッー、どうかな、それよりも幸せが二倍続くように、、ちゅうんは。

27         決まった、、、よかった。

和尚16  い、チョコレートより甘すぎる、はとてもひらめく、こんなのもあるぞ、五こうのすりきれ。

28      ごぼうのすりすりじゃあなく、五こうのすりきれ、これまた、く聞いたことのない名、その名に深い意味があるのですか。

和尚17  さよう、ありまくるのじゃ、三千年に一度、天の神が空から降りて来られる。その時なぜか岩をなでる、なでられた岩はなでられたことで、少しかける。   それを何百回か何千回か繰り返すことで、岩がすり切れてなくなってしまう。一つの岩がなくなることを一こうという。五こうというのは、何とその5倍の時間じゃ、  この子の命が五こうのすりきれ続くようにという意味じゃ、よかろが。

29   本当に、ありがとうございました。わが子の名は五こうのすりきれに決めました。

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4.僕の英雄

皆さんにも誰にも今までお世話になった人は必ずいると思います。そして、その人こそあなたが本当に感謝しないといけない人だと思います。そう、僕にもそういう人が います。その人こそ僕の心の英雄なのです。

みんな  僕の英雄

 さあっ、授業が始まります。今日の授業は何でしょう。多分確か、国語の授業だったと思います。

先生   さあっ、授業を始めるぞ、お前たちの担任の山内だ、今日の天気は最高だ。 まだまだこうのつくものはいっぱいある。親孝行、行動、効果ちなみに僕の名前はこうだ、うふふっ。

子ども1 4月から担任してもらっているから先生の名前ぐらいみんなに知ってまーす。

先生   違う違う、馬鹿言うな、この会場にお集まりの皆さまは知らんのぞ、知らないのじゃっ、でも覚えてね、私は姓は山内、名前はこう、知ったら忘れないでね。 略してやまんばこうでーす。うっふん、じゃあっ、日直さん。

子ども2 きりーつ、一発、真似をします。私は日直の越智です、知らないのなら覚えてね、私は姓は越智、名前は優一、知ったら忘れないでね。略してお湯よ。煮詰まってぐらぐらよ、じゃあっ、始めるから、気をつけいっ(ゆっくり言う)礼(速く言う)着席(ぱっと座る)

みんな  (子ども2に合わせてゆっくり気をつけいをしたり、速く礼をしたり、ぱっと座ったりする)

先生   今日の国語は、来月の参観日に向けてのことだ。参観日は、来月の4日にある。その参観日に家族の方に感謝を伝えてもらいたい、その時、愛と心を込めてありがとうを伝えてもらいたいんじゃ、あなた方のその気持ち、いや、その美しい心が家族に感動を呼ぶ、そんな参観日にしたいんじゃ。(泣き出す)う、ううっ、そう、愛は心と心のキャッチボール。だから、今から誰に書くのか深く考えてもらいたい。(みんな大きくうんうんとうなづく。先生、急に叫ぶ)ただーし、(全員、椅子からこける)お母さんやお父さんに当日びっくりさせたいからこの授業のことを言わないように、シークレット、シックレット。

子ども3 先生、しっこくれ-と、ぼくのしっこほしいんですか。

先生   いるけや、そんなもん、シークレットとは秘密ちゅう意味じゃ。

子ども4 俺はママにするか、時々、優しくしてくれて、俺が熱を出したら本当に心配してくれるから、けど口うるさい。

子ども5 確かにお前のお母さん、ガミガミ言うのぅ。

子ども6 私はパパにするわ、優しくて頼もしいだけでなく、この会場の皆様方の中でもひときわハンサムよ。(会場に向かって)パパ~、パパ~、私ここにいるわよ。

子ども7 あまりこういうことを考えたことがなかったけど、家族の中で家族を大事にし、いろいろ尽くしてくれて、優しくそれでいて、頼れる、しかもいつも温かく見守ってくれる人か。

僕     あ、あっ、そうか、分かった、ありがとう、僕分かった、分かったぞ、じいちゃん、じいちゃんを書こう。(立ち上がる)

 僕の名前はたくみと言います。たくみ君は誰を書くのか決まったみたいです。では、たくみ君のおじいちゃんという人はどんな人でしょう。さて、学校から帰って来たたたくみ君の家での様子を見てみましょう。

僕    ただいま。

母    おかえり。

僕    おじいちゃんは

母    庭よ、それより宿題しなさい。

僕    後、後。(カバンを置いて飛び出す)

母    困った子ね。

僕    おじいちゃん、何、見てるの。

祖父   台風で枝が折れたことがあったろ。たくみがそれ見て、かわいそうって言っただろぅ、それで何とかならないか2人で考え、挿し木いうて枝ごと土に挿したじゃあないか。あの枝がこんなにいきついて元気になった。

僕    えっ、これあの枝なの、へぇっ、すごい。

祖父   どんな物でも人でも自分が生きようと必死なんじゃ。

僕    そうか、必死なのか。   

祖父   生きようとする人や物が何かの原因でうまくいかなくなってしまった、それを見たらおじいちゃんは助けたくなる、困っている人や物がいれば救いたくなる、 おじいちゃんはそんな人間になりたいって、いつも思う。

僕    おじいちゃんはすごい、本当にすごい。

祖父   すごいことはないぞ、それより、これを見てみぃ。この池の水、普通の水に見えろが。でも、顕微鏡という物で見ると違った景色が見える。顕微鏡を使うと小さな物が大きく見えるんじゃ。じゃから、今まで見えんかった物が見える、知らなかった未知なる世界が見える。

僕    見えんかった物が見える。僕、見たい。見たいなあっ。ちょっと行ってくる。

祖父   どこへ。

僕    お母さんに買ってくれるかどうか、聞いてみる。じゃあっ、おじいちゃん行ってくるね。

 こうして僕はお母さんのところへ行きました。お母さんに自分の気持ちを伝えるとすぐお母さんの返事を聞くことができました。

僕    (口を動かし、話すふりをする)

母    だめ、だめよ。

 たった一言で終わりでした。腹が立った僕はスポーツ少年団のある日だったので必要な物を取り出し、家から飛び出しました。

 でも、おじいちゃんは2人の会話を聞いていたのでしょう。僕が飛び出した後、お母さんに話しかけたそうです。

祖父   かずみさん、顕微鏡のことじゃが、買ってあげてもいいかい、もちろんお金はわしが出す、わしはやる気は伸ばした方がええと思うんじゃ。贅沢な服を買いたいとか、いらん物やくだらん物を買いたいと言っている訳でなく、自分から何かを調べたい、それに必要だから買いたいと言っているんじゃから。

母    おじいちゃんはいつも相手のことだけを考える、いいんですか。(祖父うなづく)ありがとうございます。

祖父   でも、どこで買ったらいいんか、わしにはさっぱりわからん

母    それなら分かります、もうインターネットの時代ですから、ちょっと待ってください。(パソコンを開く)おじいちゃん見てください。ほら、こんなに    あります。

祖父   どれどれ、じゃあっ、これにするか。

母    じゃあっ、注文しますね。あさっての夕方には届きます。

祖父   速いもんじゃのぅ、さてさて、びっくりさせたいから、このことはたくみに言わんといてくれ。

母    はい、はい。

 2日後の夕方、待ちに待った顕微鏡が届きました。

母    おじいちゃん、届きましたよ、顕微鏡が。

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続きは、お問い合わせください。

5.怒りを胸に

この話は、最近起きたある事件を参考にして構成されていますが登場人物等架空であり、フィクションであります。

第一場面(放課後、教室の片隅にて)

少年A   山岡、自殺したなあっ。

少年B   あいつは意気地なしで勝手に死んだだけや。

少年C  でも、あいつの金俺らでつこたんやし、ばれたらやばいで。

少年D   何言うてんのや。あいつの金はあいつも納得して、みんなでつこたんや。

少年A   あいつの金巻き上げるのに、自転車壊したり殴ったりしたことは。

少年E   お前も気が小さいなあっ。やってない言うて、言い はったらええのじゃ。

少年D   良ちゃんの言う通り、証拠もないし絶対ばれへんで死人に口無しや。

少年C    他の奴らが告げ口したら。

少年E    ええ加減にしい、知らん言って、言い張ったらええんや。

少年B    この話はここまでや。あーあ、金づるがなくなってもうた。

少年D    これでもう、カラオケで特上寿司食べれへんのか。

少年E    あほか、来年は誰にも邪魔されへん中3生や、下級生で金づる見つけたらええんや。

少年D    そうや、今まで良ちゃんのおかげで贅沢できたんやから、山岡の件は絶対に秘密や、分かったなあっ。

 こうして問題グループは別れました。でも問題グループはこの話を隠すことはできませんでした。それはどうしてでしょうか。それは、山岡君への思い、死への悲しみ、いじめに対する怒りだったのではないでしょうか。そしてその悲しみ、怒りは、たちまち全国へ伝わりました。

 自殺にまで追い込まれた山岡君の悲痛な叫びを忘れていいものなのでしょうか。この劇は、山岡君を通して、いじめ問題を問うためのもので、答えは一人一人の考え方で決まります。

第二場面(教室にて)

森下    中学二年A組の担任となりました森下高子です。先生は今まで小学校でしか教えたことがありません。一人の悩みはみんなの悩み、一人の喜びはみんなの喜び、  共に手と手を携え、みんな一緒に頑張りましょう。

少年E  あの女、ちょっとうるさいから、からこうたれや。(少年Bをにらむ。)

少年B  手と手を結べ言うても土井君の手汚いから、先生僕いやーん。(おどけて言う。)

少年C  そうや、そうや。

みんな  (クラス中、馬鹿にした笑いをする。)

森下   静かに、友達は仲間なんですから馬鹿にしてはいけません。先生はそういう言い方は嫌いです。

少年D  良ちゃん、先公本当に生意気やなあっ。

少年E  ああっ。

少年B    あの態度むかつく、良ちゃん、あの女、からかわしてや。

少年E  なんかええ知恵あるか。

少年B  ある、ある。次の休み時間言うわ。

第三場面(廊下にて)

少年B  先公の前で気の弱い山岡と上田にあほの土井を殴らすんや、怒られるんは山岡と上田や。俺らは関係ないで、そやけどええ見物になるわ。

少年A  おっ、チャンス、先公もあほの土井もおるわ。

少年E  誰か、山岡と上田に殴るよう言うて、呼んでこい。

少年D  俺が殴らせるわ。ちょっと待ってな。(舞台から去る。)

少年D  (二人を連れ)山岡と上田、お前ら土井嫌いなんやな。(にらむため二人頷く。)嫌いなら早く殴れ、殴らんかい。

山岡    (森下先生の方を向いて)先生がいるから……。

少年D  えっ、お前は、先公の手先か、えっ、手先なんか、(にらむため頷く。)ちゃうんやったら男の意地みせてみい。山岡、先公に聞こえるよう大きい声で土井を   呼び捨てにせい、わかったか。それから二人掛かりでおもいっきし殴るんやで。(二人を蹴りあげる。)早く殴ってこい。

山岡    土井。(軽く叩く。)

上田    いくで。(少し強く叩く。)

土井      何、何すんのや。先生、何もしてないのに二人掛かりで俺を。

森下    二人ともどうしたのですか、何もしていない土井君を叩いて、先生さっきからずっと見ていたのですよ。(二人うつむく。)放課後、別々に理由を聞きますから  残って下さい。

少年B  うまくいったなあっ、あの先公ならちょろいものよ。

少年E  しやけど、山岡はあかんわ。

少年C  あのパンチはあきれるわ。

少年B   本当に情けない男やわっ。

少年E   そらそうや。

  土井君は学習不振児でありましたが、真面目な良い子でした。その子をあほと馬鹿にし、先生の目の前で、気の弱い子に殴らせる。そして、それを見物して喜ぶ。    その歪んだ光景を想像して下さい。

第四場面(放課後、教室にて)

森下    山岡君、どうして何もしてない土井君を殴ったの。何か恨みがあるの。

山岡    別にありません。

森下    山岡君は成績もいいし、そんなことするような子には見えないのに……。本当は何があったの、正直に言って。

山岡    (泣きながら)命令されたんです。

森下    誰に命令されたの。

山岡    言えません。

森下    先生は山岡君を助けたいの。また、命令されていや思いをするのは山岡君よ。

山岡    (か細い声で)清水君。

森下    よく言ったわ、山岡君。(入口の方へ走り、戸を開ける。)

山岡   (必死になって)先生、待って、清水君に言わないで、(悲痛な声で)僕いじめられる、いじめられてしまう。

森下   (山岡君に向かって)構わないのよ、上田君、清水君がいたら呼んで来て。

上田    はい。

第五場面(前庭にて)

  でも、清水君が悪質な問題グループの一員だと考えていなかった森下先生には、残念ながら、事態の深刻さが分かりませんでした。ですから、山岡君を絶対守らないと  いけないといった配慮が足らなかったのです。これから、先生に正直に語った山岡君はどうなっていくのでしょう。

上田         清水君、森下先生が来るようにって。

少年E     どうして清水が呼ばれるんや。

上田         山岡君が今日の休み時間の件で、清水君の名前を出したみたい。

少年B     何、くそう山岡め、お前は出してないやろなあっ。(胸ぐらをつかみ、腹部を蹴る。)

上田  (泣きながら弱々しい声で)僕の番まだやし絶対、出しません。

少年D  ちょっと俺、先公とこ、行って来るわ。

少年A  大丈夫、しみちゃん。

少年D 俺はしらをきるだけやからええけど、許せんのは山岡や、殴れいうても、あのパンチ。(山岡君のパンチを馬鹿にした物真似をする。)次は俺の名前、2度も逆らって。悪いが良ちゃん、俺んちまで山岡連れて来てや。(反対方向にいる上田君を見て)おい、上田行くぞ。        

  森下先生の前で、清水君はしらをきり通しました。そして、上田君までもがそういうことはないと言ったのです。そのため、逆に正直に語った山岡君だけが嘘をついたと いうことになってしまったのです。そればかりか、怒りを露にした問題グループに囲まれ、山岡君は清水君の家まで連れて行かされました。この時の山岡君の気持ちを想像してみて下さい。

第六場面(少年Dの家にて)

少年E   何でぺらぺらしゃべるんや。

山岡     (弱々しい声で)許して下さい。

少年D   じゃかんしい、何でお前を許さな、あかんのや。(蹴り上げる。)

少年B   いい加減にしいよ。(何度も蹴る。)

山岡     (泣きながら)もう言いません、決して言いません。

少年A   じゃかんしぃ、謝ってすむ問題とすまん問題があるんや。

少年E   先公にちくる奴なんかもう信じれんわ。(おもいっきり蹴り上げる。)わかっとんか、このぼけが。

少年C   しみちゃんにどう償いをするんや。えっ、山岡。(首を掴む。)

少年D   ちょっとやそっとの償いや絶対許さんで。

少年E   そや、山岡金出せや、はよう出さんかい。(山岡俯せで腹を押さえ、ゆっくり震えながらサイフへ手を伸ばそうとする。少年Eその手を蹴って)もうええ、      お前の気持ちはようわかった。上田、山岡の金取れ、今すぐジュースと煙草こうて来い。

少年D   こいつだけは、絶対許せれん、まだ痛い目あわさんと、こっちの気がおさまらんわ。(A、Cに向かって)おい、蹴れや。

  結局、森下先生は命令したグループに何ら注意もしませんでした。しかし、その三日後には、山岡君、上田君の両親まで呼び、厳しい指導をしました。

第七場面(放課後、自転車置き場にて)

少年D   山岡、待てや。

少年C   昨日の約束忘れたんか。

山岡     (うつむく。)

少年A (嫌みっぽく)返事せんのか、ええ度胸しとるやないか。

少年E   もうえっ、そやけど、これでお前の自転車いっつもパンクや、それでもええんやな。

山岡       あっ。(一瞬顔を上げるが、すぐつらそうな顔をしてうつむく。)

少年B   わかったんやったらな、はよう金持ってこい。

少年D   明日までやで。

  このように問題グループの山岡君に対するいじめは、だんだんとエスカレートしていきました。そんなことに気づかない森下先生は、何度も山岡君に問題グループから  抜け出すよう説得しました。抜け出したいのに抜け出せないそんな山岡君の気持ちを少しも分からずに……。

第八場面(放課後、河原にて)

少年E   金持って来る約束やろがあっ。

少年D   俺らとの約束破るんか、このボケが。(蹴り上げる。)

少年B   お前は痛い目あわんとわからんのやな。

山岡       みんなに取られたし、もう金はない。(泣き出す。)

少年D  それやったら覚悟せいや。

少年E   お前が持ってくる言うまでとことんやったるわ。息が出来んよう顔を水に漬けたれ。

山岡    (少年A、C二人掛かりで押さえ込む。)あっ、あっ、何、何する、やめてぇ、やめてえっ。(顔を水に漬けられ、必死で暴れる。……その後、顔を上げられる。) うわあっ、はっ、はあっ、はあっ、やめて、もうやめてえっ。

少年B   やめたら金が出るんか、ふざけんな。

少年E  そら、もう一回や、顔を水に漬けたれ。

山岡   やめてえっ、頼むからやめてえっ、もう本当にやめてえっ。(先ほどと同じようにされる。)おっ、げえ、げえっ、げええっ。……、はっ、はあっ、…… 許して。

少年E   お前の頼みなんか知るか。よっしゃあっ、今度は川や、川へ放り投げい。

山岡    (少年A~Dに取り押さえられ、手足をもたれる。)あっ、ああっ、許して、(遠くへ投げられる。)苦しい、苦しいよう……。(浮いたり沈んだりしなが     ら)うえっ、おえっ、うおえっ。(必死の思いで川岸にたどり着くが、すぐ五人に囲まれてしまう。少年Eの足を掴もうとするが、思い切り踏みつけられる。)     うおおっ、頼む、やめてええっ。

少年E  (山岡の顔を蹴り上げ)ええ加減にせい、もう一回や。もっとおもいきり放り投げい。(先ほどと同じようにされる。)

山岡       は、はあっ、はああっ、うえっ、おえっ、うおえっ、……。(川岸に何とかたどり着く。)はあっ、はあっ、はあっ。

少年E   まだされたいんか、それとも許してもらいたいんか、どっちや。

山岡       許してえっ、(大声で泣き叫びながら)もう何でもするから許してえっ。

少年E  それやったら、親の金盗んででも何でもして、明日中に5万持ってこい。わかったな、(念を押すように)えっ、わかったんやなあっ。

少年D  わかったんか、おい、こら。(胸ぐらを掴む。)

山岡  わかった、わかったよう、あ、あっ、ああっ、うわ、うわっ、うわあん。(大声で泣き崩れる。)

  これが集団化した悪質な問題グループなのです。絶えず弱い者から金を巻き上げようとします。その金で服を買ったり、カラオケ店で歌ったり、ゲームセンターでゲームをしたりして一時的快楽をむさぼります。それを維持するためには、お金がいくらあっても足りません。だから、お金を巻き上げることのできる弱い者に対して、組織から 抜け出せないよう屈辱感と恐怖心を植え付けるのです。このことにより、新たないじめに怯えたパシリは、何でも言うことを聞くようになるのです。命令されると問題グループと一緒になって煙草を吸ったり、物を盗んできたりもします。しかし、このパシリは、問題グループの一員ではなくいじめの最大の被害者なのです。

  山岡君に心の安らぎがあったでしょうか。本当のことを両親に話せず、先生からは不良だと思われ、同級生にも助けてもらえず、自分一人で全てを背負い込んでしまい  ました。そういうつらい悲しい生活の中で唯一甘えさせてくれる存在がおばあちゃんでした。どうしても言えぬ、その苦しい思いをおばあちゃんに慰めてもらっていた  のでしょう。        

第九場面(自宅のおばあちゃんの部屋にて)

山岡      おばあちゃん、部屋にいるぅ、僕やけど、入ってええ。

祖母      元也か、はよ、入れ、はよう、入れ。今日は今までお父さんに、お金のことで怒られとったなあっ。でも、本当は、お父さんお前のことが心配で心配でたまら ないのじゃ。

山岡   (うなづく。)

祖母   お金がいるのなら、いつでもばあちゃんに言えよ。

山岡   おばあちゃん、お金なんかいらない。

祖母   大丈夫か、大丈夫か。けど学校行きたくないなら、休むとええっ。人間の一生、1年や2年遅れてもいつでも取り戻せる、休むのなら休め。ばあちゃんは      元也が元気になってもらいたいだけじゃ。

山岡   おばあちゃん。(泣きつく。)    

祖母   つらかったの。おばあちゃん、お前がええ子なんはよう知ってる、よう知ってる。

山岡         おばあちゃん、おばあちゃん。(泣き始める。)

祖母            もう、いやなこと忘れて、はよう、寝い。おばあちゃんは、いつでも味方やで、味方やで。

山岡            おばあちゃん、おばあちゃん。(大声で泣き崩れる。)

  山岡元也君には、家族の優しさ以外、救いはありませんでした。自分で解決できない問題を1人背負いこみ、どうしようもない袋小路に追い込まれたまま、家族にとって 悲しい日を迎えたのです。この日の朝、問題グループに命令されるがまま盗んだ自転車の件で、その持ち主のところまで、父親と2人で謝罪に行きました。そして、   いったん自宅へ帰り、昼食を摂り、どこかへそっと出かけたそうです。それが家族にとって最後の別れとなってしまいました。

第十場面(空き地にて)

少年A    山岡は遅いなあっ。

少年D  そやけど、あいつほど脅しがいのある奴はおらんなあっ。

少年B  ほんと、脅せば脅すほどよう働く。

少年C  ほんまは脅されたいんと、ちゃいまっか。(嬉しそうに)ああっ、脅してえな、脅してえなあっ、元也、それがうれしいの。

少年たち (馬鹿にしたように笑い転げる。)

少年D  おっ、来たぞ。(山岡の姿が見える。)

少年E  持って来たんやな。

山岡   (俯きながら、黙ってサイフを出す。その金を不良たち、のぞき込む。)

少年D  何や、少ないやないか。

少年E  これで許せいうんか、甘えんな。(腹を蹴り上げる。)

少年B  馬鹿にすなや。(顔を叩く。)

少年D  明日までに、一億持ってこい。

少年E  そうや、1億円や、わかったなっ。(にらみつける。)

山岡    けど、……。

少年B  けども、へったくれもあるか、どこからでも盗ってこい。

少年E  わかったなっ、わかったんなら返事ぐらいせんか。(山岡君の顎に手を当て、にらみつける。)

  このようにして、分かっているだけで、山岡君は百十万円以上の金を取り上げられていったそうです。

  もうこれ以上は無理だと考えた山岡君は、どうしようもなくさまよい歩き続けました。そして、誰にも見付からず、自宅に帰ってきたのでした。 

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6.立ち上がれ

この話だけは忘れたらいかん。それでのぅ、お前が大きくなったらお前の子に伝えるのじゃ。お前の子はへと、……。ええかっ、それがここに住むのりなんじゃ。

 西条市には、ある人のをえるがしている。その人こそ壬生川町長であった一色耕平である。

 このドラマは一色耕平を中心にのが、いわゆるを日本でににまでくまでのをしたものである。

 住友鉱業所は明治37年、今からおよそ百年前、事業を別子山び新居浜にて行っていた。この当時、鉱山のから出るつまりガスをぐことはしかった。そこで住友鉱業所は新居浜で起こった煙害を防ぐため、瀬戸内海のれ島である四坂島に製錬所をすことにした。現在のお金にすと数千億円も使ったといわれる。

 明治38年四坂島でなを始めたが、住友のが大きくはずれ、くことに10海里・19㎞もれた市町村にまでガスをんだ煙が飛び、が広がってしまった。  

    時は明治39年7月、二人の農夫が自分たちの耕している田をながめ、何やら話し合っている。

農民1(父) 米作りで大事なんは今じゃ。

農民2(子) おっ父、この七月今日みたいに毎日、がかんかんに照ってくれたらええのぅ。

農民1(父) この調子なら、きっとええ米がとれる。

農民2(子)  (にさわりながら)本当に青々とした元気の良い葉をしとる。葉の表だけじゃあない、裏もきれいじゃ。

農民1(父)    少しでも金をためて、おんしや孫のために田を持つ、わしの願いはそれだけじゃ。さあっ、たたかずに、取りでも始めるか。(立ち上がり、腰をたたく。)

農民1(父)  (辺りをきょろきょろし)何か、くそうなってきたような気がせんか。

農民2(子)    おっ父、あっちから煙が、……。しかも、えらいじゃ。(遠くを指さす。)

農民1(父)    げほ、げほ、げほっ、こりゃあたまらん、とにかく家へ入ろう。(二人舞台から去る。)

農民2(子)  (しばらくして2人現れ)うわあっ、あっ、あっ、ああっ、おっ父、さっきまであんなに元気だった稲が、……。

農民1(父)    あっ、あああっ、稲が真っ白じゃ、あたりみんな真っ白になりれてしもとる。

農民3    平さん、平さん、わしとこの田が、わしとこの田も、……。

農民1(父)  (空に向かって)何でこうなる、何かわしら悪いことをしたというんですか。

農民2(子)    おっ父、むなんかない、どうしたらええっ、そうじゃ、このを早う見もらわんと。町長さんじゃ、一色町長を呼んでくる。

一色      (しばらく後現れ)こりゃあっ、ひどい(2人にしく)平蔵、又八、つらいのぅ。

農民3    町長、わしらの生活が、一瞬で、……。こんな稲、こんな稲、……。(をき、投げてようとする。)

一色              又八、そんなことやめい。お前のしみを稲に当たってどうなる。そんなにできんのならわしに当たれ。

農民3    町長、町長、……。わしゃあっ、あ、ああっ、あー、……。(地面をたたく。)    

一色             どうして、こうなった?

農民1    あ、あっ、あっちからの煙が、……。

一色    (顔をしかめ、指さされた前方を眺め)あーっ、やはり、あの煙か、……。

農民2(子) 何か心当たりが、……。

一色     うーむ、(うつむきながらゆっくり顔を上げ)今は言えん、けど、このことをってこらえるにはいかん。平蔵、又八ののしみ、そしてにあったみんなの  深いしみをすはいかん。

農民1      (泣きながら)町長。

農民3    町長。(泣き崩れる。)

  明治39年7月21日、、三芳、壬生川地区の田はいのようなガスにより、のうちに、り一面、にるまで真っ白になり枯れたようになってしまったという。

  また、この年、越智郡より西ヶ原農事試験場に送られた稲をした結果、稲に見られたは、ではなく煙害がであろうとのを得た。

こうした中、貧しく苦しい生活に追い込まれていく農民をうため壬生川町長・一色耕平らは、被害の原因が煙害であるというためのめ、このを何とかしてもらえるよう国や県へのお願い、住友鉱業所・久保支配人との話し合い等、煙害を解決しようといろいろ努力していった。だが、なかなか思うようにうまくいかず、ただ月日だけがって  いった。

 明治41年5月19日、壬生川町長・一色耕平、庄内村長・青野岩平、三芳村長・渡辺静一郎の3名は、愛媛県知事・安藤謙介と会うこととなった。

渡辺静一郎  (トントンと、ノックをし)失礼します。

知事     よう、わざわざ来てくれて、まあっ、座って。

三人     (座る。)

知事     わしらが、君らの所へ視察に行ってから早、一ヶ月が経つか。あの時、稲の標本を持ち帰った県農会の岡田君は、調査の結果、被害の原因は煙害じゃと  はっきり言いよった。

青野     そこなんじゃ、被害の原因はもうはっきりしとるのに、住友は認めない。

渡辺     そのせいで我々百姓の不満はたまる一方。

青野     わしらの力なんかたかがしれとる、県の方でも何とかするよう、住友や国にきかけてくださらんか。                

知事     わしもわしなりに気にしとる、っているんじゃが、あの田中正造先生がになって取り組んでいる古河の足尾鉱毒事件でさえ解決のめどすらたっておらん。 君らの相手はあの天下の住友ぞ。住友鉱業主・住友さんの実の兄さんは、時の総理大臣・さんじゃ。

青野     それはどういう意味ですか?じゃっ、煙害問題は解決しない、解決する気もないということですか?

知事     が、そう言った。なかなかしい問題じゃ と言いよるだけじゃ。

渡辺     県はきちんとした対応はしてくれんという事ですな?

知事     君らはこのわしに国と闘えというのか。はっきと言わせてもらうが、知事というをかけてまで、この問題に立ち向かう気はない。

青野     そしたら、そのおかげで、ひどいめにあっている百姓を見殺しにするということですか。

知事     住友には、、愛媛県あっての住友なのだということを言っている。その愛媛県をないがしろにできないはずじゃ。

一色     (いていた顔をゆっくり上げ)しかし、あれからもう4年。だんだんと米が穫れないようになり困り果てて泣き暮らしとるみんなを、なだめになだめてやってきたんです。知事さんはみんなの気持ちをよう分かってくれる立派な方やから、みんなの立場を分かってもらってなんとかしてもろてくると。どうかわしら百姓の苦しい立場を分かって下さい。

知事     君らが苦しんでいるのはよう分かる。だから、わしも上京し、主務省で住友と農民との煙害協定を結ばせてやろうと考えとる。

青野     ほーうっ、それはいつ頃ですか。

知事     うーん。(腕を組み、頭を下げる。)

一色     安藤知事、これからもよろしくお願いします。

知事     (顔を上げ)おうっ、わしも君らの手助けになれるようる。

渡辺     では失礼します。(3人とも退席し、3人無言のままロビーの所まで歩く。)

青野     知事の態度どう思う。

渡辺     あれじゃあっ、見込みはないのぅ。

青野     これで、国もだめ、県もだめか、一色さん。

一色     田中正造先生は国会で訴え、世論に訴え、天皇に訴え、失敗した。その失敗と同じ道を歩まないためには最後には直接、住友と話し合うしかない。大阪まで行き、住友鉱業主である住友吉左衛門友純さんと直接、話すだけじゃ。

青野     それしかないか、じゃが、うまくいくか、……。

一色     何ら悪うない百姓を見殺しにして何が正義ぞ、正義のない社会があってはいかん。田中正造先生が負け、わしらが負けたらこの国に正義はない、これは正義をかけた闘いなんじゃ。

青野     一色さん、そんなに考えていたんか。

一色     この問題だけは、本気じゃあないと解決せん。

青野     一色さんが本気なら、わしらも本気じゃ。

渡辺     (大きくうなづく。) 

三人     (一色耕平の手の上に青野の手を置き、その手の上に渡辺の手を置く。そして、三人顔を見合せてうなづき合う。)

 一色耕平の信念に理解を示したことで農民側に信頼と団結心が芽生えてきた。こうした中、運命の8月26日、周桑郡農民大会を迎えることとなった。その日、とともに青空に拡がったの合図で、四方八方より多くの農民が大明神川に集まり、その数、二千五百名にも及んだと言われる。代表者より今までの町村での取組、今後の活動方針について発表があった。その後、閉会することとなっていたが、閉会後も、あちこちで話し声、時には泣き声、悲痛な叫び声、そして怒鳴り声も聞こえてくる。

 そして一人が叫んだ。

農民4    わしは一生懸命わしなりに働いとる。わしの頭の中は稲のことで一杯じゃ。我が子のように育てた稲が元気に実る、それだけがわしの喜びなんじゃ。   なのに、あの煙が、わしの稲を、わしの生活を。

農民5    お前だけじゃない、なんでわしらみんながこんな苦しい生活をしなければいけないんだ。

農民6    米が穫れにくうなって、もう三年。小さい頃からわしを大事に育ててくれたばあちゃん、わしが泣いとったら、泣きやむまで背負ってくれたばあちゃん、 そのばあちゃんが弱っていったのに、満足に食べさすことすらできんかった。だから、だんだんと弱り、死んでしまった。

農民7    わしらは、ずうーっと我慢してきたが、もうこれ以上待ってどうなるというのじゃ。

農民8    もう待っても仕方がない。

農民9    こうなったら力ずくじゃ。

農民10   そんなことしてみいっ、が悪うなって、それで終わりじゃ。

一色     そうじゃ、あくまでも正義をかけた闘いにもちこまないと、こっちの負けじゃ。

農民11      じゃ、わしらどうしたらええっ?

農民2(子) 町長さん、あの時、言ってくれたじゃないですか、わしらの本当の悲しみ、そして被害にあったみんなの悲しみも許すわけにはいかないと、       わしは、その言葉を信じてどこまでもついていきたいんです、ついていく、町長さんに。

農民1(父)    わしら何でもするから、お願いします。

農民たち   お願いします。

一色     (しばらく考え込むが、ゆっくり顔を上げ)やるか、立ち上がるか、みなでやろうやないか!

農民2(子) 町長がやる気じゃ、一色耕平がやる気じゃ。

農民たち   (互いに手を取り、喜び合う。)

一色     周桑の人間の意地を、正義を、りを、住友にいやに天下にしめそう!!

農民たち   (互いに手を取り、喜び合う。)

一色     よっしゃっ、(両手を斜め前方にあげ、大声でしゃべり始める。農民たち、黙って座っていく。)原因ははっきりしている以上、この上は、我々の生活を守るため被害者一同自ら交渉しよう。し、凶器と見なされる、は一切持たないこととする。あくまでも我々は正義をく者である。新居浜にある住友鉱業所に直接き、当事者同士話し合いだけで解決を図ろうではないか。もしそこに決定権がない場合、大阪まで赴き、住友吉左右門友純氏と直談判し、解決できるまで粘り強くやり抜こうではないか。よし、行こう、新居浜へ、今こそ、新居浜へ。

農民たち   (立ち上がり)おうっ。

 ついに、一色耕平、そして我々の先祖は解決することを信じ立ち上がった。

 農民たちは、抱き合い喜ぶもの、何やら大声を上げ気合いを入れるもの、一瞬、煙害問題に勝利を収めたかのようなとなった。そして農民たちはそれぞれ自分の家へと向かう。家族と別れて行く者、あくまで家族と共に行く者、それぞれ一ヶ月分以上の食料、などを積み込み、まだまだ明るい夕方四時、周桑郡を出発した。その数四千人。 それだけの人数のものが、を起こす可能性のあるものが新居浜へ向かって歩いても警官は止められなかった。なぜなら凶器と見なされるもの一切を持っていなかったから。

 一行が新居浜へ到着したとき、もう陽もとっぷりと暮れてしまっていた。

 それぞれが、住友病院前広場、小学校そして、意気盛んな若者たちは河川の堤防にて一夜を過ごした。刻々と対決の時間が迫る中、農民たちもこの四年間を思い、眠れぬ一夜を過ごした。

 次の日の朝、住友鉱業所前には決意を胸に秘めた農民たちがそこここから次々と集まってきた。それと対決するかのように住友鉱業所内外には多くの警官、守衛により 厳重に警戒されていた。そこには今にもぶつかり合いそうなだった雰囲気がたちこめていた。

 そんななか一色耕平は静かに農民たちに語りかけた。

一色     周り見てみぃ、このままじゃけんかじゃ。そうならんように今からわしが中へ入る。皆もそのが終わるまで、静かにここで待っといてくれ。ええか、ぎを 起こすと、とりかしのつかないことになる。わしが帰るまで騒ぎだけは起こさないでくれ。

農民A    どんなときでも、町長さんはたった一人で重荷をい込もうとする。

農民B    今度だけは、皆で解決するために来たのじゃないですか?

農民C    町長さんだけに危ない目にあわすわけにはいかん。

一色     まあ待て、わしらは何も悪いことしとらんのに、この。けんかにならんよう、わしは少し言わせてもらいたいだけじゃ。

農民D       そんな町長さんだけに、いつも町長さんだけに。

農民E    町長さん。

農民F    町長さん。

一色     (怒ったように)わしを信用出来んのか。(優しく)大丈夫じゃ、心配いらん。

一色     (ゆっくりと農民から離れ、正門に向かって)鉱業所の中にいる者に対して、ものす、我々は煙害により被害を受け続けてきたものである。       その我々が直接、出向いたのに、このものものしい警戒ぶりは何ごとぞ。さあっ、かんぬきをはずせ、中へ入れい、早う、開けんかい。(門が開き、一色耕平だけが入って行く。)

農民G   (後ろ姿の町長に)町長さーん。(叫ぶ。)

農民H   (もっと大声で)町長さーん。

  こうして一色耕平はみんなの心配と期待を背負い、鉱業所へ入っていった。一色耕平が目指すはただ、一点、久保支配人のいる応接所へ、ゆっくりゆっくり踏みるように 歩いて行った。

一色      (ゆっくり落ち着いてノックする。)

久保     どうぞ。

二人      (軽い会釈をしあう。)

久保     これは、一色町長だけですか。どうぞ、お掛けになって下さい。すごい数の人が集まりましたね。私はすっかり取り囲まれてしまいました、どうしたら  収まりますか。

一色     そこじゃ、問題は!久保支配人、わしは農民の生活を守らないといけない、ここまで皆で来たからは収まるようにしてもらわないと収めようがない。       引きようがない、まさに命をけてのけんかにきたのじゃ。だから、今から話す話をよう聞いて考えてもらいたい。

久保     けんかですか、したくない、一色さんとは、……。まあっ、どうぞ、おっしゃって下さい。

一色     まず、第1点、警備をしよる人間が気にいらん。わしら武器も何も持っていない被害者の百姓ぞ、それなのにあんたらはを持って、りたいのなら、今すぐ、わしを殴れ、殴らんのなら、そんなもの、しまってくれ。しまわないといけない。第2点、わしらは、今ここにいる農民全員でこの問題を解決に来たのじゃ。煙害問題解決のため正々堂々とみんなの前で話し合いをしてくれ。第3点、話し合いは今すぐ、農民たちのいる鉱業所前広場でお願いしたい。第4点、被害を受けてから早4年、今までわしらがいかに我慢してきたか、その償いはきちんとしてもらわないと困る。第5点、最後の要求になるが、この煙害のため、泣き苦しみ、それでもけなげに頑張ってきたわしら、そのわしらがわざわざ来たというのに、この8月の灼熱地獄の中、何ら日除けも作らず、そのまま放置するとは何ごとぞ。以上5点、わしら被害民からの当然の 要求じゃ、飲めるか飲めんか、よう考えてご返答お願いしたい。

久保              お気持ちはよく分かりました。でも私の一存だけでは、なかなか返事できないところもあります。しばらく協議させてもらって構いませんか。

一色     煙害始まりより4年、もう4年も協議してもらっているのにこれ以上何を待つ。もう待てんからわしらは来た、あくまで即答でお願いしたい。

久保     うーん。(しばらく考え込み、ゆっくりと笑顔で)分かりました、基本的に一色さんの条件を受け入れましょう。それしかない、いやそれでいい、    それがいい。

一色     賠償問題は?

久保     そのことも含め解決できるよう大阪へ渡り、皆を説得してきます。

一色     久保さん、今までずっともめにもめとる問題をそんなにに言って、あんた、あんたの立場、本当に大丈夫か?

久保     一色さん、構いません、いいんです、私もあなたと同じ考えだ、悔いのない人生を歩みたい。自分の立場は捨てました、あくまで皆様方を、困っている方々を救いたいのです、このままでは憎しみだけが怨念の様に残ります。それではいけません。住友の負けではなく、私を含め住友が考えを改め、皆様方を救わないといけないのです。

一色     あんたって男は、みんなと違う人生を進んで歩もうとする。東大教授になれるはずのものがならず住友に入る、住友のトップになれるはずのものがいとも 簡単に農民側につく、……。

久保     一色さん、それでいいんです。そのおかげであなたと知り合えたじゃないですか。どうでしょう、これでけんかをしなくてすみますね。

一色     やっぱり、あんたって人は、すごい男じゃ、ありがとう、ありがとう。

二人     (握手をする。) 

  被害農民23万人、その代表者として農民の気持ちをした一色耕平。その要求を一色耕平の要求をのこととして受け止める住友鉱業所の支配人久保。

 そんなやりとりが分からない農民たちの間では、なかなか顔を見せない一色耕平のことを心配し、ががっていった。

農民I    どうしたんかのぅ、町長さん。

農民J    無事やろか、やろか。

農民K    あれからつのに、姿が見えない。

農民L    町長さんがおらんと、これからどうなるんじゃ。

農民M    何か、あったんじゃないんか?

農民N    でもないこと言うな、町長さんはじゃ。

農民O    そんなこと言っても、どこにも見えない。

農民P    わしらのために命がけでいろいろしてくれた町長さんの姿が

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7.誠意・忍耐の人

そう、今から40年前、ある方がむかしあったことを思いだしながらに話してくれたことがありました。

誠意忍耐の人・寺町一郎

  その方が最初に丹原町役場福祉課にあらわれたのは、今から40年前の昭和57年、12月の寒い朝でした。

一 郎     コホッ、コホッ(かるいせきをし、まわりを見まわしながら)どうも、……おはようございます。

役場1  おはようございます。

一 郎     少し、寄付をさせてもらいたいのですが、……。

役場2  寄付というと、……。

役場1  だれか、ご家族の方がおなくなりになられたとか、……。

役場2  こらっ、こらっ、……全く。

一 郎     私が生きて元気な間、なるべく寄付ができればと思いまして、……。

役場3  ほうっ。

一 郎     持ってきていますから。(袋を開け、ゆっくり役場3に渡す。)

役場4  このお金を寄付すると。(その声を聞いた職員集まってくる。)

役場5  えっ、本当に。

一 郎     そうです、これを寄付したいと、……。

役場6  おいっ、全部でいくらある?(役場3、数えようとするが)

一 郎    (さえぎるように)百万円、あります。

みんな  百万円! 

役場7  これをどうしろと、……。

一 郎     もし、この丹原町にお金の面で困っている人がいるのなら、救ってもらいたい、いや使ってもらいたいと、……私は、昔、お金で困ったことがありました、   その時、ある人が私を助けてくれたのです。もし、その人がいなかったら私だけでなく、共に働いてくれた従業員も……、だから今度は私の番なのです。

役場8  あなたは、……確か、……て、寺。

一 郎     私が誰であるか、そんなことはどうでもいいじゃないですか、それよりこのお金をみんなのために使ってもらいたいのです。

役場8 (一郎の顔をじっと見て)やっぱり、思い出した、あなたは、あなたは、寺町さん、……。

一 郎    (言葉をさえぎり)後はよろしくお願いします、では、失礼します。

 名前をあかさなかったその老人、いや、その方は、またその翌年も決まって12月になると百万円を持って丹原町役場現れたのでした。

  名前はふせられたままでありましたが、そのことはで少しずつみんなの口にのぼるようになってきました。

 やがて、丹原町で多くの人の話題となり、誰が寄付をしているのか関心が高まりました。昭和62年、丹原町役場は、ためらう老人を押し切り、愛媛新聞にその名を  載せることにしました。

    その名を寺町一郎と言います。

 どうして寺町一郎は、丹原町役場福祉課へ現れたのでしょうか、いや現れないといけなかったのでしょうか、今からそのことについて話していきたいと思います。

 寺町一郎は北海道手塩国中川郡美深町で生まれました。寺町一郎の父が北海道、いわゆる屯田兵として移住したからです。

 その後、家族共々、ふるさとの壬生川町、現在の西条市へ戻りました。やがて父親の元から独立し、25歳の時に大阪で弟と二人、手を取り合って、ねじの工場を   始めました。

 ねじの製造といっても初めのうちはたった二人の家内工業、貧しく苦しい生活が続いたのです。

 そんな生活の中でも寺町一郎は負けません、今もカーン、キーンと、金属がこすり合う音や金属を切る音などがする作業場で働いています。大晦日も過ぎ、今日は正月、1月1日でも、手を休めません。

弟      (時計のある方向を向き)おや、もう夜中の12時を過ぎてしまった。兄ちゃん、もうやめようや。

一 郎     でも、区切りのいい所まで、もう少しがんばらないと、言われた日に間にあわなかったら、えらいこっちゃ。

弟    そんなにも働かないといけないのか。

一 郎     正月を祝いたい、まだ小さい弟や妹には小遣いを渡したい。けど、そんなことできるか。今のままでは、苦しいだけや、みんなを幸せにしたい、でも、どんなにしたくても今の生活では無理なことじゃ。

弟    この小ねじ一つ一つにわしらの生活の全てがかかっとるのか。

一 郎     ねじ一個、ねじ一個、どこのねじ工場にも負けないくらいていねいに作らないと。もう話はここまで、さあっ、がんばるか。

(2人とも、だまって作業をするが、作業の音はずっと続いている、……しばらくすると、外からドン、ドン、ドンと、戸をはげしくたたく音がする。)

となり1 寺町さあん、寺町さあん。

一 郎    (時計を見て)あ、しまった、もうこんな時間か。

となり2 寺町さあん。

一 郎     はい。(戸を開ける。)

となり1 もう何度も言うたやないか、うるそうて寝られまへんがな。もう夜中の3時や、いいかげんにやめなはれ。

となり2 そうや、そうや。

一 郎     どうも、すんまへん、もうやめますさかい。

となり1 ほう、それやったら、はよう、やめなはれ。

となり2 まったく、ブツ、ブツ、ブツのブツ……。(2人、立ち去る。)

弟    分かっとるけど、近所に迷惑をかけてしまうのぅ。

一 郎     わしらが食うていくためには、がんばって働かないかんし、がんばりすぎたら近所に迷惑がかかるか。

弟    あっ、むずかしい問題じゃ。

一 郎     あっ、寝るか、おやすみ。

弟    おやすみ。

(しばらくすると、また、外からトン、トンと、戸をたたく音がする。)

弟    さっきのとなりのおばさんかのぅ。

一 郎     そうかもしれん、それより今、何時や。

弟    もう、9時や。

一 郎     こりゃっ、寝すぎてしまった、はよう、起きるぞ。

山 岡    (外からの声)寺町さあん、おはようございます。

一 郎    (その声につられるように)はい。(戸を開け、顔を出す。)

山 岡     寺町さん、新年おめでとうございます。これからもよろしゅうお願いします。

一 郎     山、山岡社長じゃあないですか、わざわざおいで下さいまして、……こちらが年始のあいさつにうかがわないといけないのに。

山岡夫人 いつもりっぱなねじを作って下さいまして、本当に感謝しております。

山 岡    (夫人の方を向いて)そうや、寺町さんはな、大変熱心に工夫される方や。ねじやま、一つ一つまで、ほんの小さなところまで気を配り、非常に丁寧に仕上げ  るのや。たった一つのねじを見ただけで作った者の心意気が分かるんがこの世界や。その点も人柄も、申し分ない大変素晴らしい方やねん。

一 郎     この大阪にいろいろ大きなねじ工場があるなか、うちのような小さな工場をひいきにしていただき、本当に感謝しています。これからもどうぞよろしゅう     お願い申し上げます。(頭を下げる。)

山 岡     寺町さん、頭を上げなはれ。下げな、いかへんのはこっちや、これからも一つよろしゅうお願いします。(一郎に手を差し出す。)

一 郎    (手を出し、双方握手をする。)ありがとうございます。

 この人がヤンマーをおこした山岡孫吉でした。

 後日このことについて、寺町一郎はしみじみとこう語りました。

「たとえ、大会社の社長であっても、いばって人を見下すような人なら、その人のためになんか、良い物なんか作ってやるかと思うかもしれません。しかし、ヤンマーの社長さんはそんな人とは全く違っていました。その上、私どものような小さなねじ工場にも必ず年始のあいさつに来てくれるのです。本当にうれしかったですね。ですから、よし、この人のために誰にも負けないりっぱなねじを作っていこう、まさにそんな気になりました。」

 さて、一つ一つのねじを工夫しながら作りあげていった寺町一郎は次第に世に認められていきました。

  ちょうど、そのころは、日本が第二次世界大戦に向かってまっしぐらに突き進んでいった時代でもありました。戦争に必要な武器である戦車、戦艦、飛行機など、どれを とってもねじは必要でした。良いねじを求める軍部は、技術力の高い会社を必死で探さねばなりませんでした。

  そういう訳で、海軍は良いねじを製造できる近畿地区の鉄工所関係者を呼び出しました。その中には、寺町一郎も含まれていました。

軍人1  全員、起立。(すばやく、同時に立つ。)

軍人2  今から、ねじに関して会議を開く、着席。まず、この資料を見よ 。(他の軍人、資料を配る。)

軍人3  今日、君らを集めたのは、分かっている通り、海軍の指定工場を決めるためだ。この資料の通り、実行してもらいたい。ぜひ、あなた方の中から選び決める  つもりでいるから、その心づもりでいてもらいたい。

軍人4  では説明に入る、……以上で終わるが、何か質問は?

一 郎     少し意見を言わせてもらっていいですか。材料一覧を見たのですが、これでは、この資料の通りの個数は無理です。それをしなさいと言ってもできない物は  できません。また、この個数全てを一ヶ月で仕上げろと言われても、いいかげんな物ならできても、納得のいく物は作れません。

軍人5 (怒ったように)お前は誰だ。

一 郎     小さいながらねじ工場を経営している寺町一郎と言います。

軍人6  よし、他に質問は、他のみんなはこの資料の通り、できるんだな。(資料をたたく。)

(みんな急にうつむき、静かにしている。)

軍人3  では、これで終わるが、後日、文書によって指定工場を発表する。ただし、寺町だけは残っておけ。

後 給    (他の同業者退場しようとするが、後給だけは寺町のところへかけよる。)おい、寺町君、大丈夫か。

一 郎     後給君か、また悪いくせが出てしもた。

後 給     そんなことあらへん。寺町君が正しいよ、偉いよ。僕にはそんなこと言う度胸なんかあらへん。でも、……、ただ、寺町君が、……心配なだけや。

一 郎     ありがとう、いつも心配かけてすまん、後給君。

後 給        いやいや、あんたの姿を見て、偉いと思っているんや。いつも何事にも全力投球や。そんなあんたは俺の師匠や、でも、もしも寺町君、困ったことになったら 言ってくれ、……できることは何でもするさかい。

軍人4 (大声で)寺町。

後 給    (小さい声で)じゃあ、寺町君。(立ち去る。)

一 郎    (意を決したように)何かご用ですか。

軍人3 (寺町をゆっくりと、上から、そして下から眺め直し)逆にお前が気に入った。他の奴らは海軍というだけでびびって、本当のことは何も言わん。お前は正直に できることとできないことを考えてくれた。そやから、本当にお前が信用できる。海軍のため、いや日本のため、協力してくれ。

一 郎     協力はしたいと思いますが、私より腕の良い大きな会社は、この大阪にたくさんあります。そういったところに頼まれたらいかがでしょうか。

軍人3  いや、わしはおまえの目を信じた。ぜひ、お願いしたい。(頭を下げる。)

一 郎     でも、……。

軍人7  でもとは何だ、これは海軍、いや国家の命令である。

  こうして、逆らうことのできない時代の流れにより寺町一郎の工場は海軍指定工場となりました。

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8.喜左衛門狸

西条市北条にある神社にとして祭られている喜左衛門狸は今の言い方でいえばのあるそれはそれは大きな狸でした。この大狸が活躍したのは、今から百年ほど前の江戸 時代で、おさんもいた頃のお話です。この頃には、工場も車も電車もありません。まして、夜は電気の明かりがないため、り一面真っ暗なの世界がひろがっていました。

  人間が寝静まった頃、川では、になるを求め、どこからともなく狸さんたちが現れるのでした。

  そこはまるで狸さんたちだけの国・楽園でした。

  では、狸さんたちを呼んでみましょう。

  狸さーん、狸さーん。

1狸A    今日の崩口百周年記念パアーチーは楽しいのー。

2狸B    それを言うのなら(きざに英語風に)パーティー。

3狸C    すごい、この当時に英語を自由にれる狸がいたとは。

4狸B    まだまだいけるゼ、べイビィー。(大げさに両手を広げ。)マイ ネーム イズ○○○○。センキュウ、センキュウ、センキュー。

5狸D    ではただいまより、百周年記念行事に移りたいと思います。まず始めに崩口狸村・村長である○○○○のとってもためになる感動と勇気そして愛と友情の  深まるとても大切な話より始めたいと思います。

6狸E    (ハンカチを持ち、泣き声で)みなが、みなが苦労に苦労を重ね、それでも負けずに嵐の日も台風の日も頑張ってくれたおかげで今日の会が開かれたんじゃ。ジュル、ジュル、ジュル、シューン(思いっきりを出す。)ありがとう、ありがとう、皆の衆。

7狸たち   (泣き声で)村長さん、村長さん、う、うっ、ううっ。

8村長     みんな、みんな、ありがとう、う、うっ、ううっ。

9喜左衛門      村長、ちょっと、お頼みしたいことがあります。

10村長       なんじゃ、この感動的歴史的瞬間を、後にしろ。

11喜左衛門     だから今日話さないといけない。

12村長          分かった、分かった、言いたいことがあれば、この場で言ってみろ。

13喜左衛門     実はわし、人間の国に行きたい。

14みんな   (一斉にびっくりしたような顔をし、ワイワイガヤガヤ騒ぎ出す)。

15村長          静かに、これは非常に重大な大問題じゃ。皆はどう思う。意見があれば一人ずつ手を挙げて言ってみろ。

16狸F       絶対に人間の国へ行ってはいけません、どうしてかって、あそこはアホな国です、アホがうつります。

17村長       どうしてアホなの。

18狸F          それは本当のアホだからです。理由は今から簡単に述べます。人間の家には、どの家にも料理をするところがあるのです。そこであの危ない危ない火を   使うのです。

19狸G    え、えっ、ええっ、火事にでもなったらどうする。

20狸F    それで時々、火事になるらしくて、今、住んでいるところが燃えて、その隣の家が燃えて、そのまた隣の家が燃えて、そのまたまたまたのまた、……。

21狸H    そりゃあっ、確かにアホじゃ、わしらは、火やか使わない、のぅ、みんな。

22狸I    わしらは、(一息あけ、泣き声で。)使いたくても使えない。

23狸F       ええか、単にアホだけやない、友達や家族をを平気でる悪い奴なのじゃ。

24狸J       何、友達や家族を裏切る。

25狸F          そうじゃ、こないだ人間の家をのぞいていたんじゃ。人間と一緒に住んでいるニワトリ、これは人間と一緒に住んでいるから人間の友達じゃ、いや友達以上の関係、親友じゃ。その友達がふんばって、ふんばって(ふんばるかっこうをし)う、うっ、ううっ、コケコッコッー。(卵がおしりの方から出てくる。)必死で産んだ卵をこっそり盗んでいた、のぅ、お前も見たのぅ。

26狸K          おぅ、見たとも。

27狸F          それだけじゃあない、きわまるひどい奴じゃ。何も悪いことをしとらん、わしらの仲間を何匹もつかまえ、殺した。

28狸L          そうじゃった、わしの大切な大切な親友で恋人で初恋ののたぬ子は人間につかまり、にされ、食べられてしもた、う、うっ、ううっ。

29狸たち    (二人一組になり、騒ぐ振りをする。)

30喜左衛門     みんな待ってくれ、(動作を大きく、静かにと叫ぶ。)だからこそ、誰かが人間の国へ行って、我々狸のように優しく思いやりのあるよう人間を変えていかんといかん。また、人間の良さも学びたい。村長、どうかわしを人間の国へ行かせておくれ。

31村長          喜左衛門、お前がそれ程、言うのなら、分かった。しかし、狸汁にされないよう、気をつけるのじゃぞ。今から、わしの知り合いの長福寺のに手紙を    書くから、それを持って行って来い。(しっぽを使って書く振りをする。)

32喜左衛門  わしの出発を祝って、歌でも歌ってくれ。

  こうして喜左衛門は人間の世界に行き、長福寺の南明和尚のもとで人間と狸のけ橋となるべく、修行に修行をつむのでした。

  そうこうするうちに、1年がちました。そんなある日、、長福寺に空から訳の分からないへんてこな手紙が落ちてきました。

(何人かの人たちがをほうきでいている。)

33人間A      おーい、空から手紙がってきたぞ。

34人間B      空から降ってくるとは、気味が悪いのぅ。

35人間C      気味が悪いんやったら、読まずににするか。(思いっきり鼻をかもうとする。)

36人間A   (あわてて)待て、待て、大切な手紙かも知れん。

37人間B     ちょっと見せてみい、こりゃあっ、分からん、ちんぷんかんぷんじゃ。

38人間C     どれどれ、ぽんぽん、ぽぽぽん、ぽんきっき、愛媛のジュースはポンジュース、徳島生まれはボンカレー、亀に似ているすっぽん、になればすっぽんぽん、 ミツカン、アジポン、昔のテレビ番組ぽんきっき、……。ぽんだらけで意味がさっぱり分からないのぅ。

39人間A     さてはこれは、人間ではないぞ、狸からの手紙やないか。ちょっと喜左衛門を呼んでみるか。

40みんな     喜左衛門、喜左衛門 。

41喜左衛門   どうした。

42人間J    これ見てみろ。

43喜左衛門   どれどれ、こりゃあっ、狸語じゃあないか。ふんふん、ふんふん。ちょっと和尚様のところへ行ってくる。

44人間K    まあっ、待て。それで何と書いてあったのじゃ。

45喜左衛門   まあっ、大したことではないが、讃岐の屋島のはげ狸から、どっちの方がだますのがうまいか勝負しようという手紙じゃ。

47人間L    なにぃ、勝負。そりゃっ、大変じゃ、あのはげ狸、だますのは日本一ちゅう、うわさじゃからのぅ。

48人間M    喜左衛門、大丈夫か、お前もだますのはうまいが。

49喜左衛門   それだけは、やってみな分からん、とにかく 、和尚様に相談じゃ。

50和尚     (正座し、うそのお経を読む。)腹が減った、飯食わせ、風呂にはいることを入浴、アメリカの大きな町の名ははニューヨーク、フランスのはボンジュール、 日本の誇るはポンジュース。(鐘をたたく。)

51喜左衛門  すみません、和尚様、ちょっとお話が、……。

52和尚    何じゃ、喜左衛門、大切な大切なの最中に、まあっ、仕方ない、中へ入れ。

53喜左衛門  実は先ほど、このような手紙が。

54和尚       なんなんじゃ、これは。うーむ、意味がまるで分からない。何と書いてあるのじゃ、喜左衛門。

55喜左衛門  顔は知らないが、おぬしが伊予の喜左衛門か、わしは あろう、天下に知れ渡った屋島のはげ狸じゃ、グワッハッハッハ。お前はりに威張りまくっとるという、うわさじゃが、まんだまだこのスーパー狸のわしの敵ではない。ちょっとでも、分かりやすく言えば顕微鏡を使って見ることができるほこりぐらいの自信があれば、讃岐の狸まで来て、わしとだまし合いの勝負をせい、もし2日以内に来なかったら、わしの勝ちとみなすぞ、グワッハッのグワッハッハと書いてござります。

56和尚       それで、喜左衛門、どうする気じゃ。

57喜左衛門  はい、ここでわしが逃げたら、わしらの崩口狸村もなしの弱い村と見なされ、他の狸村からにされてしまいます。

58和尚       お前の気持ちはよう分かった。

59喜左衛門  行っても構わないですね、和尚様。

60和尚       うーむ(うなづく。)、じゃがちょっと注意してもらいたいことがある。ひとーつ、お前はをだしたままで気づかずにいることがあるが、尻尾をしまい忘れたら、いかんぞ。分かっとると思うが讃岐の人間に狸だとばれると狸汁じゃぞ。もうひとーつ、ここだけの話じゃが、あと3月後に、の殿様の大名行列が金比羅様であるそうじゃ、絶対捕まらんように気をつけるのじゃ、喜左衛門。

61喜左衛門  ありがとうございます、和尚様。ではすぐ出発しますので。

  その後、すぐに出発した喜左衛門は、持ち前のを使って狸道をすっ飛んでいきました。その速いこと、速いこと。こうして天下分け目の狸対決が始まるのでした。   (はげ狸、現れ、辺りをきょろきょろ眺めている。)

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9.ドスコイ部屋

ここは、ある相撲取り部屋・ドスコイ部屋です。ドスコイ部屋はできたてのピカピカの部屋でまだ力士は一人もいませんでした。でも、今日6人もの若者が入門して   きました。そのうち親方の息子2人も含まれています。

親方     今からすっごくいい話をするから、よーく聞いてね。ここがこれがぼくちゃんの部屋・ドスコイ部屋よ。そう、あの窓も、この柱もこの畳も全て、    全て僕のもの。

骨と皮    何とすごいことだ、それやったらこのほこりも親方のものか。(さかんにほこりを取るふりをする。)親方、どうぞ。

親方     ほこりなんてお前にやる、そんなもの。でも、お前に言いたい。自分にほこりを持て、ほこりのある人生を歩めとな。(ほこりをつける。)

見かけつよ山 よかったな、ほこりをくれて。(ほこりをつける。)

たれの海   おめでとう。(ほこりをつける。)

へくさ山   おめでとう。(ほこりをつける。) 

親方     だまらっしゃい、これを英語で言うとシャラップ、けつから出るものはプー。

へくさ山   親方、けつからは、プーだけでなく実も出ます。

親方     そう、実が出た同士は、くさい中。こらっ、何言わす。ここからが大事じゃ。相撲で必要なのは1に顔、2に顔、3がなくて、4に会話術。

たれの海   親方、小学生の前では、言いにくいことですがそれホストの条件ではないですか。

親方     ホストも相撲道も政治の世界も一緒じゃ、ホストいてくれ、分かったか。

見かけつよ山 親方、はっきり言って分かりません。

親方     そうか、そうか。ちょっとおいで、よう言ってくれて、ありがとう、大事な話をするから耳を貸せ。(大声で)もう、言わないか。

見かけつよ山 ほおえっ、もう言いません、許してください、お代官様。

親方     分かったか、これにて一件、落着。では、今からしこ名をつけていく。襲名披露じゃ、つけられた名は大切にするのだぞ。

親方     まず、わしの息子からじゃ。おぅ、神様、マイゴット、ひらめいたぞ、ちょっと待て、(物差しを持ってくる)やっぱしゃ、お前はわしが思っている通り、鼻が高いから高い鼻じゃ、いい名じゃ。

高い鼻    父ちゃん、僕の鼻が高いのは、昔から知ってるでしょう。

親方     何を言う、恋人でもないお前の顔なんか、あまり見たことがなかったから気付かなかった、じゃ次はお前。兄ちゃんのお前には、必殺のしこ名をつけて  やる。鼻が赤いから赤い鼻じゃ。赤い鼻、何回聞いてもいい名じゃ。赤い鼻、この名を大事にせい。

赤い鼻    ははあっ。

親方     今度はお前らじゃ、ビシバシ決めたいいしこ名をつけてやる。まずお前は、そうじゃ、ガッテン。(骨の皮に軽く息をかける。)

骨と皮    (目を丸くしながら)何じゃ、この強い風は、すごい風じゃ、台風か、戸締りは大丈夫か。(ぐるぐる回りながら飛んでいく。)

見かけつよ山 お前は馬鹿か、風じゃない、親方の息じゃ。

骨と皮    え、ええっ、あの強い風、台風じゃないの。

親方     ええいっ、だまれじゃない、シロップじゃない、何だ。

赤い鼻    シャラップ。

親方     そう、そのシャラップ、ちょっと息を吹きかけただけで、飛んでしまうとは、その原因はお前の体じゃ。全く相撲取りに向いていないその体、骨と皮しかないから、お前は骨の皮じゃ。

骨と皮    ははあっ、いったんしこ名を襲名した以上、その名が後世まで語り継がれるよう、一層精進してまいります。

見かけつよ山 よっしゃあっ、次は僕を。

親方     お前の趣味は何じゃ。

見かけつよ山 女の子とするままごとです。

親方     何、ままごとだと、この体をして、見かけは強そうなのに実際は女々しいとは。分かった、見かけつよ山じゃ。

見かけつよ山 決まってうれしいわ、うっふん。

親方     じゃあっ今から、超ハイスピードでしこ名をつけていってやる。(手帳を出し、鉛筆の先をなめながら)次はお前じゃ。家族の特徴は、何かないか。

たれの海   うーん、そうじゃ、うちのばあちゃんのおっぱいがたれています。

親方      決まった、たれの海じゃ、次はお前、趣味は、得意技は。

へくさ山   実はわし、わしは、サツマイモが好きで、年中食べています。だから、してしまった屁がくさいそうです。

親方     おぅ、いい特徴じゃ。しこ名はへくさ山じゃ。

へくさ山   よーし、決まった、決まったのでここで一発、ぶぶぶぶぶー。

みんな    こりゃすごい、たまらい。くさっ。(めいめい騒ぎ出す。)

 こうして、それぞれにしこ名をつけていってもらいました。史上最弱と思われるドスコイ部屋が誕生したのです。自分たちが本当に弱いことも知らずに自信だけは人一倍でした。

親方     全員集合じゃ、番号。

みんな    1、2、3、4、5,6,7,8、9、10、11、……。

親方     シャラップじゃ、何で6人しかいないのに、11も続く、今日は、とほほ。こんなつらい日はない。

見かけつよ山 親方、どうしたのですか。

親方     う、う、うっ。(泣きそうな声で)

骨と皮    泣きたいのなら、僕の胸でおもいっきりお泣き。

親方     キモー、誰がお前の胸で。今、ぼくちゃんは、最悪の生けるしかばね、略してイケシカ、早く今日一日過ぎてほしい。ぼくちゃんの願いはただそれだけ  じゃ。

へくさ山   そしたら昼寝をしたらどうですか。

たれの海   その通りです、体、そう命が大事です。そんなに悩んだら長生きできません。

親方     あ、ああっ、いけない、めまいが、……。お前ら今日初日なのに悲しくないのか。

骨と皮    あ、は、は、はっ。親方、初日はうれしいのにきまっています。

親方     あ、頭痛が、お前ら自分の置かれている位置、実力を知っているのか。

骨と皮    そらあっ、知ってます。わしは序の口の優勝候補ですから。

親方     誰がそんな、途方もない冗談言った。

骨と皮    わしが自信をもって言いました。

見かけつよ山 こらっ、骨、甘いぜ。優勝を争うにはまだ修業が足りない、優勝はこの見かけがいただきじゃ。

親方     あ、苦しい、お前ら本当にそんな恐ろしいことを考えているのか。

へくさ山   恐ろしいことではありません、当然なことです。

たれの海   そうじゃ、その通り。

親方     もう、ええっ。ぼくちゃん、熱が出てきた。

骨と皮    さすがの親方も初日ですっかり緊張してしまったに違いない。

見かけつよ山 さあ、みんなやるぞ、やりまくるぞ。

みんな    おー。

骨と皮    ファイト。

みんな    うっふん。

骨と皮    ファイト。

みんな    うっふん。

 こうして親方以外、待ちに待った初日が始まりました。どうなってくのでしょうか、楽しみですね。

アナウンサー 北は北海道、南は九州、沖縄、そしてモンゴルのみなさん、久しぶりのこんちちは、間違えた、こんにちはでした。今日も解説者には、な、なんと    いいかげん親方をお招きいたしております。親方、よろしくお願いします。

いいかげん  お風呂は、いいかげんがいいですが、解説はいいかげんにならないよう全力をかけてお届けします。

アナウンサー おっと、さあっ、始まりました。

行司     ひがあしー、高い鼻、にーし、プリプリプリリン山。

高い鼻    貴様、プリリンと言ったな、どこからでもかかってこい。はっきり言っておくが、お前は3秒後に、僕の一撃でこの土俵からいない。

プリプリ   高い鼻、甘いぜ。お前こそ、俺の必殺技に耐えられるかな。

行司     見合って、見合って。はっけよーい、のこった。

プリプリ   ハンマー・チンチンドンドン・グレート・腹パンチ。(腹を後ろへ引き、前へ突き出す。)

高い鼻    (ぐるぐる回りながら)う、ううっ、苦しい、強烈だった、こんなはずではなかったが、ばたり。(倒れる。)

行司     プリプリプリリン山

アナウンサー 次の力士の登場です。

行司     ひがあしー、まいった海、にーし、赤い鼻。見合って、見合って。はっけよーい、のこった。

まいった海  赤い鼻、俺の右手を見ろ、ぐるぐるぐるのぐるぐる。(ぐるぐる右手を回し、突然、骨と皮の顔の目の前でパンと手をたたく。)

赤い鼻    あっ、目が回る、ど、どこだ、どこへ行ったまいった海。(キョロキョロ手を顔に当て、辺りを見回す。)

まいった海  ここだ、お前の後ろだ。(一段と大きな声で)どうだ、まいったか。

赤い鼻    (後ろから押され)あ、ああっ。

行司     まいった海ー。

アナウンサー すごい、すごい技が出ました、何という技ですか。

いいかげん  あの技ですか、あの技がいわゆるトンボだましです。小さな子どもの頃、トンボの前でやったあの技ですよ。

アナウンサー お茶の間のみなさーん、びっくりびっくり技です、それがトンボだましです。さあっ、次が始まりました。

行司     ひがあしー、見かけつよ山、にーし、見かけよわ海。見合って、見合って。はっけよーい、のこった。

見かけつよ山 あ、しまった、つまずいた。

見かけよわ海 こら、乗るなあっ、重たいがー。

行司     見かけつよ山。

アナウンサー 一瞬で、一瞬で勝負は決まりました。でも、あの技は。

いいかげん  あの技は300年に一度しか使われたことがないと言われているコケッタです。こけたふりをして相手を倒す大技です。

アナウンサー さあっ、待ちに待った取り組みです。将来の横綱候補・はくほうきの登場です。どうです、未来の大器は。

いいかげん  うーん、全体から漂う空気が違う、それに比べて骨と皮、まるで情けない。はっきり言おう、今すぐ相撲取りをやめなさい。

はくほうき  ワタシ、二ホンハジメテ、二ホンハジメテデース、南朝鮮から海を歩いてきました。本当に海面を歩いてきましーた、右足が沈まないうちに左足を出し、 左足が沈まないうちに右足を出して、ついに渡りました。ヨロシク、ソシテ、ガンバリマース。

骨と皮    頑張らなくて結構です、頑張られると負けるじゃないですか。

はくほうき  デモ、ガンバリマース。

骨と皮    いいや、頑張らないでください。

はくほうき  デモデモ、ガンバリマース。

骨と皮    ごちゃごちゃ、うるさい奴じゃ。いくぞー。

行司     ひがあしー、はくほうきー、にーし、骨と皮。見合って、見合って。はっけよーい、のこった。

はくほうき  南朝鮮自慢のおしりかく攻撃。

骨と皮    (はくほうき、骨と皮のおしりをこそばす。)あっはっはははー。こそばい。(自分から土俵をわる。)

アナウンサー この技も初めてみましたが、何という技ですか。

いいかげん  あの技は500年に一度しか使われないと言われているこちょばっちゃんというかく攻撃です。思わずおかしすぎてやる気をなくし、自分から進んで土俵をわってしまうというすさまじく相手を倒す大技です。

  名前の挙がらなかった力士は明日初土俵ですが、ドスコイ部屋にとって最悪の一日、それはそれは長い一日でようやく終わりました。特にドスコイ親方にとって本当につらい一日だったのです。案の定、今場所の成績はあまり良くありませんでした。骨と皮全敗、見かけつよ山1勝6敗、たれの海2勝5敗、へくさ山2勝5敗、赤い鼻3勝3敗、高い鼻3勝3敗、困り果てたドスコイ親方、しばらく寝込んでしまいました。でも、寝込んでもさすがは親方、必死です。夢の中でも考え続けました。何をって、それはもちろん必殺練習方法です。 

親方     全員集合じゃ、番号。

みんな    1,2,3,4、5、6、7、8、9、10,11,12,13,14

親方     もうやめい、永久に続くが。ぼくちゃんもようやく元気が出てきた。

骨と皮    そりゃあ、良かった、心配してたんです。

たれの海   おっぱいたれの海ことたれの海のわしもおっぱいじゃない心配してたんです。

へくさ山   親方がなんで悩んでいたのか全く心当たりはありませんが、大丈夫ですか。

親方     ええい、お前らのせいで悩んでいたのだ。

見かけつよ山 え、ええっ、そうだったのか、わしは全然気づかなかった。

骨と皮    にぶいお前に気づける訳はない。

見かけつよ山 そしたらお前は気づいていたのか。

骨と皮    お前は馬鹿か、なんで親方の恋人でもない俺がそんなことに気づく、なあっ、みんな。

みんな    そうじゃ、そうじゃ。

親方     あ、また、また頭痛が、苦しい、苦しすぎる。

骨と皮    親方、苦しみをわしに分けてください。二人で分け合うと苦しみは半分になります。そのために、早くわしの膝の上に、……。

親方     う、ううっ、吐き気じゃ、はあっ、はあっ、はあっ。

見かけつよ山 見かけの馬鹿が、親方、馬鹿を相手にしても何も始まりません。それよりわしの愛らしい瞳を見つめてください。すると苦しさもすぐに忘れ、そこには、 そこには」二人だけの愛、いやラブのワールドが開かれます。

親方     う、たまらない、強烈な吐き気じゃ、苦しい、苦しい、ゼ、ゼエ、ゼエッ、うわーっ。(前かがみになり倒れてしまう。)はあっ、はあっ、はあっ。

骨と皮    見かけ、お前が変なことを言うからこんなことに。親方、わしは絶対に変なことは言いません。

見かけつよ山 わしもの変なことを言いません。これからは練習もまじめにします。

みんな    わしらも同じです。

親方     (何事もなかったようにぱっと起き上がり)そうか、ほんとだな、はじめからお前らが素直であったらこうはならなかった。明日から秘密の特訓をする。 毎日朝2時に起きる。そして新聞配達をする。雨の日も嵐の日も台風の日もすることによって足腰と根性を鍛える。

5時に新聞配達を終わり、帰り次第、腕立て伏せ500回、鉄砲500回、ぶつかりけいこ50回、バーベルを使って、片手・両手50回ずつ、それから自分の得意技を 磨く秘密練習を9時までに終わる。それから12時まで休みなしに飯を食いまくる。飯を食うのも命がけぞ。そして1時から工事現場に出向き、勤労の尊さと暑さ寒さに 打ち勝つ体力づくり、そして夜になると静かに読書をする。経済に関する本を読み、社会の動静を知りまくるのじゃそれを毎日繰り返す。強くするまでしまくるぞ、   よっしゃ、やるぞ。                  

骨と皮    いっちょう、やるぞ。

みんな    オー。

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10.6ぴきのかえる

1996(平成8)年、東予市「絵本」を愛する会から絵本「6ぴきのかえる」が発行されました。弱いと思われ、仲間はずしにあっていたが、いじめていたかえるたちを救うために立ち上がるという内容です。

温かな思いが伝わるこの絵本は、その思いとともに、愛媛県いや全国に発売されました。そして、自然発生的にこの絵本を使って劇をしたいという幼稚園・保育園・小学校が現れてきました。

その一助になればと思いから、この脚本は生まれました。

6ぴきのかえる【】

 この劇は、絵本〝6ぴきのかえる〟の作者である高松賢治さん・愛さんの御協力を得て、脚本に作りかえたものです。

だいいちばめん

  (ことりのさえずり、おがわのせせらぎをいれる。)むかし、むかし、やまのふもとにあるかわのそばにちいさなちいさないけがありました。

うしがえる    (ぶたいちゅうおうにあらわれ、きょろきょろする。)ここはどこなんだ。あっ、どうしよう。みんなと、にいさんうしがえるやおとうとうしがえるとはぐれてしまったよう。ぼくひとりだけか。さびしいよう。(しゃがみこむ。)

あまがえる    どうしたの。(うしろからあらわれ、かるくかたをたたく。)

うしがえる    かわでおよいでいたら、こんなこんな(だんだん、てをひろげていく。)おおきなおおなまず(おおげさにてでしめす。)がおそってきたんだ。あまりにおおきいので、むちゅうでにげたんだ。きがついたらこのいけに、たったひとりいたんだ。でもよかった、ぼくいがいに、かえるくんがいたとは。

あまがえる    ともだちになろうか。

うしがえる     なろう、なろう。

あまがえる    ぼくあまがえる、あまやどりがだいすき、よろしくね。

うしがえる    ぼくはうしがえる。とくいわざははえたたき。よろしくね。(てとてをとりあい、よろこびあう。)

 こうして、にひきのかえるはともだちになり、たのしいまいにちをすごしていました。そんなあるひ、とつぜん、よんひきのかえるたちがやってきたのです。

あかがえる    う、くるしい、たたかいにまけてしまうとは。

ひきがえる    でもよかった、なんとかにげきることができて。

しょくようがえる ここまで、にげたらだいじょうぶ。

とのさまがえる  しかし、おまえたちがよわいからまけたんだ。なさけない。

あかがえる    (おとをたてる。)しっ、なにかものおとが。

しょくようがえる まだ、てきが。

ひきがえる    なんだか、こわい、こわい。

とのさまがえる  え、ええいっ、おまえたち、みてこい。

ぜんいん     え、え、ええっー。

とのさまがえる  おまえたち、なにがいるのか、みてくることがこわいのか。(ぜんいんうなづく。)しかし、おれさまは、もっとこわい、だから、おまえたちが   みてこい。

ひきがえる    そんな、ひどい。

とのさまがえる  ひどいもひどくないもあるもんか、いけ、いくんだ。(おおごえでどなる。)

ぜんいん     わかりました。(しぶしぶしゅっぱつする。)

ぜんいん     (しばらくしてあらわれる、そのとき、にひきのかえるをつかまえてくる。)

ひきがえる    しょうたいはわかりました、このにひきです。

とのさまがえる  なんだ、たいしたことはなかったか、ひとあんしん、かおをあげい。

にひき      (かおをあげる。)

とのさまがえる  (うしがえるをゆびさし)こっちはつかいものになるが、こっち(あまがえるをゆびさし)とほほほほーっ、こりゃあっ、むり、なんのやくにも   たたん。

だいにばめん

 こうして、にひきのかえるのたのしいせいかつはおわりました。ここであらためて、のこりのかえるたちのじこしょうかい、はじまり、はじまり。

とのさまがえる  (げんきよくあらわれて)おれさまはとのさまがえるだ。すきなことはちゃんばら。このいけでいちばんえらいんだ。えっへん。

ひきがえる    ぼくはひきがえる。バイオリン【ばいおりん】をひくのがだいすきなんだ。

しょくようがえる ぼくはしょくようがえる。(りょうてをあわせ、かおにあて)りょうりをつくるのがだーいすき。

あかがえる    ぼくはあかがえる。こうふんするとかおがまっかになるんだ。でもえさをとるのはうまいんだ。

とのさまがえる  さあっ、めいきょくでわれらのほこり「かえるのうた」をうたうぞ。

ぜんいん     (たのしそうにうたう。) 

だいさんばめん

  でも、このいけでいちばんふるくからいるあまがえるは、なにもわるくないのに、とのさまがえるからきらわれ、みんなからのけものにされました。だから、いつもぽつんとそらをみあげてくもをながめているのでした。

あまがえる    うしがえるくんとふたりきりのせいかつはたのしかったな。みんなともあそびたいんだけれど、なかなか、なかまにいれてくれないんだ。だからそらをながめているんだ。(さびしそうに)ゲロッ【げろっ】。(ぶたいからたちさる。)

あかがえる    あまがえるがたちさるとあらわれ)ぼくたちはくいしんぼうで(たべるまねをする。)、およぐのがだいすきなんだ。(およぐまねをする。)

とのさまがえる  (えらそうにあらわれ)あかがえる、えさをとってこい。

あかがえる    はーい、いますぐ。(ぶたいからきえるがすぐあらわれる)こんなにとってきました。

とのさまがえる  しょくようがえる、いますぐりょうりをせい。

しょくようがえる はーい、(エプロン【えぷろん】をしてあらわれ、りょうりをするかっこうをして)へい、できました。

とのさまがえる  こら、うしがえる、このうるさいはえをたたけ。

うしがえる    はーい。(ジャンプ【じゃんぷ】をしてたたくまねをする。)

とのさまがえる  ひきがえる、れいのきょくを。

ひきがえる    はーい。(バイオリン【ばいおりん】をひく。)

とのさまがえる  がつ、がつ、がつ、げぷーっ。あーっ、くった、くった。おれさまはちょっとすいみん。ぐおーっ、ぐおーっ。

ひきがえる    さあっ、おれたちのばんだ。てをあわせてください。

さんびきのかえる いただきます。

うしがえる    (せきをたってあまがえるのところへいき)ごめんよ、あまがえるくん。これ、たべもの。(そっと、あまがえるにたべものをわたす。)

ひきがえる    あまがえるのところへいって、なにをしてるんだ、うしがえる、はやくこっちへこい。

うしがえる    これ。(そっとあまがえるにたべものをわたす。)じゃあっ、いかないといけないから。

あまがえる    ありがとう、うしがえるくん。

  でもからだのちいさなあまがえるは、くもをみつめることしかできないと、いちばんさいごでしかたべさせてもらえませんでした。

あまがえる    ぼくもみんなといっしょにたべたいな。(あたまをさげ、とぼとぼとぶたいからさる。)

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11.明るい明日を信じて

昔のちょっと、昔のまだお侍さんがいたころのお話です。

ある村に、おばあさんとその孫であるという友吉という名の子どもが住んでいました。家族はたったの2人で、貧しい生活でした。でも、2人は大変仲良くくらしていました。おばあさんはとても友吉を大事にし、大事にされている友吉は、進んでおばあさんのお手伝いをしました。そして、友吉はおばあさんに喜んでもらえることは何でもしようとしました。

 そんなある日のこと、友吉はずっと気になっているけど、聞き出しにくいことを思い切っておばあさんに聞いてみることにしました。

 それはお父さんやお母さんについてのことでした。

友吉    (手伝いをしながら)ばあちゃん、どうしてばあちゃん、わしには、家族は、ばあちゃんだけなの。 

ばあちゃん     そうじゃのぅ。

友吉     ばあちゃん、お父さんやお母さんは、どうしていないの。

ばあちゃん  そうか、知りたいのか。いつかはお前に話さないといけないと思っていた。でも、なかなか言う気にはなれなかった。あれからもう9年が経つ。あの年の 夏は、異常に雨が降り続いた。そしてあの日を向かえてしまった。あの日のことだけは忘れたくても忘れることができない。夢で何回うなされたことか。

友吉     ばあちゃん。

ばあちゃん  あの、あの晩は夜中に降り続く雨の音以外に、地面が割れるようなものすごい音が遠くから聞こえてきた気がしたのじゃ。それで急いで飛び起き、家から出た。誰もいないはずなのに後ろを振り向くと、本当に小さなお前がいた、家の前になぜか友吉が立っとった。その時じゃ、向こうからものすごい勢いで水が流れ込もうとしているのを感じた、ばあちゃんは、水が来るぞ、逃げるぞと大声を出し、お前をつれて逃げた、どうしても友吉だけは助けないといけないと考えたからじゃ。だから、すぐ逃げた。もう一度、家族に向かって夢中で、大変じゃ、早く逃げるぞ、みんな起きろと叫び、お前一人連れ、高台へ逃げた。するとすぐ、あっという間に濁流が流れ込み、家がのみこまれてしまった。

友吉     それで。

ばあちゃん  しばらくして、もどると、もう、誰もいない。あの優しかったじいちゃん、いや本当に優しすぎるぐらいの人やった。どんなに疲れていても、顔に出さずよく働く父ちゃんも、よく気が付き、いつも笑って明るい母ちゃんも、もういなくなった。つらくてたまらなかった、けどおまえがけらけら笑うのを見ていると、家族のみんなが、友吉を育てるためだけにわしを生かしてくれたとしか思えなかった。明日は明るくなることを信じて、がんばれば希望が見えることを信じて、お前を育てているのじゃ。

友吉     そんな、ばあちゃん、そんなことがあったなんて。

ばあちゃん  後でお寺のお坊さんから聞いたのじゃが、山崩れが起きるときには予兆があるそうじゃ。小石が落ちたりがけにヒビが入ったりするそうじゃ。そういうことがあったにも気づかなかった。

友吉     どうして、お坊さんにはそんなこと、分かるの。

ばあちゃん  それはわしらと違って、字が読めたり書けたりするからじゃ。10年前に起こったことを書いている本を読めば10年前のことが分かり、100年前にあったことを書いてある本を読めば100年前にあったことが分かるそうじゃ。それだけではない、字を知っていると、大きな町で働くところもでき、豊かな生活ができるそうじゃ。

友吉     字が読めるとそんなにいいことがあるのに、なぜわしらは字を読んだり書けたりすることができないの。

ばあちゃん  仕方がないのじゃ、わしらの中に誰もできる人がいないのじゃから。また、教えてくれる人がいない。ここらで読めたり書けたりできるのは庄屋さんやお坊さんだけじゃ。   

 友吉は、おばあさんの心にい深い傷があることを初めて知りました。また、いろいろな本を読む大切さも知りました。

 それから、友吉はずっと字を覚える方法はないか、考え続けました。あるとき、心の中がくもった空であったのが、ぱっと晴れ、心に太陽がのぼりました。あまりにうれしくて、ばあちゃんに報告したくて必死に走りに走りました。

友吉     分かったぞ、そうじゃ、この手じゃ。ばあちゃん、分かった、分かった。

百姓1    どうした、友吉。ばあちゃんは、あっちじゃ、あっちに行った。

友吉     ありがとうございます。あ、あそこにいるのは、酒飲みのためじい、ばあちゃん、見かけませんでした。

百姓2    ふぃっ、ゲップ、ばあちゃんはどこかって、ばあちゃんの行くところは決まっている。

友吉     どこですか。

百姓2    教えてやりたいが。

友吉     じゃあっ、教えて。

百姓2    (いびきをかいて寝る)

友吉     ためじい、起きない、仕方がない、。(ゆすっても起きない、そして走る)ばあちゃん、ばあちゃん。あれは、いらないことをことを言いまくるかつじい。ばあちゃん、見かけませんでした。

百姓3     ばあちゃんが、行くところは一つじゃ。いないときは必ず先祖様のところじゃ、お前のばあちゃんがすぐに入る死んだ家族のところに決まっている。

友吉     そうか、か。お墓か。(走る)あっ、ばあちゃん。

ばあちゃん  友吉も大きになったで。でも、相変わらず貧しい生活じゃ。なんとかええ暮らしをさせてやろうと努力しているけど、みんながいないから、なかなか無理じゃ。でも、じいちゃんの分も、父ちゃんの分も母ちゃんの分もがんばるで、見ててな。友吉を一人で育て上げるから。

友吉      (小さい声で)ばあちゃん、ありがとう。(うつむく。)

友吉            (しばらく間を取り)ばあちゃん。

ばあちゃん  その声は友吉か。この馬鹿ものが、何があったか知らないが何も泣くことはない。さあっ、顔を上げて、いつも言っていることじゃが、人と話すときはしっかり顔をあげて相手の目を見て話さんと。

友吉     お願いがあるのじゃ。     

ばあちゃん  何じゃ。

友吉     たまに人を泊まらせたいのじゃ 

ばあちゃん  かまわんが、どうして泊まらせるのじゃ

友吉              泊まらせたら字が覚えらるかもしれないのじゃ。ばあちゃん、字の覚え方が分かった。

ばあちゃん  人を泊めたら、字が覚えられるって。わしにはよう分からないが友吉がそこまで言うのなら、かまわないぞ。

 その日の夕方です。日が沈む1時間前ぐらいから、家の近くにある街道に立っている友吉の姿が見られました。

 街道というのは、ずっと遠くの町までずっと続いている大きな道のことで、人の行き来が多いところです。

通行人1   ここの村は小さな村で、泊まるところがないからのぅ。

通行人2   次の村までは、遠いからのぅ。はよ行かないと、道で寝ないとといかん。それだけはいやじゃ。

通行人3   だから、次の村まで急ごう。

通行人4   急ぐぞ、急ぐぞ。

友吉     わしの考えた通りじゃ、この村には泊まるところがない。 だから、暗くなったら道で寝ないといけない。それよりは、わしとこの納屋で寝た方がましじゃ。あとはお坊さんが通るのを待つだけじゃ。

お坊さん   ふーっ、今日のお寺の会合は長びいたんものじゃ。ちいと遅うなりすぎた。仕方がない、今日は野宿か。

友吉     ちょっと、お坊さん、何かって困っていることはありません。       

お坊さん         あるといえばあるが。

友吉     それは、寝るところじゃありませんか。

おさん       まあっ、そうじゃが、それもこれも仕方がないことじゃ。何事も我慢が大事じゃ、それも修行の一つじゃ。

友吉     そんなこと言わないと。それなら、うちに泊まりませんか、その代わり、お願いがあります。

おさん    どんな願いじゃ。

友吉     (正座をして)ぜひ、わしに字を教えてください。お願いします。

おさん    どうして字を知りたいのじゃ。

友吉     わしとこの家族は字を知らないため、いろいろな知識がないため、山崩れの前兆がありながらそれに気づかず、3人の家族がなくしました。それが悔しいのです。どうか字を教えてください。(正座をしたまま)お願いします。

お坊さん   分かった、分かった。教えてやろう。  

 こうして、お坊さんは、毎月1回、開かれるお寺の会合の度に、友吉の家に泊まるようになりました。だんだんと仲がよくなり、今は友吉の家でにいろりを囲んで寝泊まりするようになりました。字の読み方、書き方以外に、そろばん、そしていろいろな知恵、人間としての生き方までもそっと教えてくれました。

 こうして、4年も経つとと、読み、書き、そろばんを覚えことだけでなく、自由自在に使うことができるようになりました。

  そんなある日のことです、お坊さんが大事な話があると言い始めました。それは、遠くの遠くの町の大きなお店屋さんが、読み書きができて、住み込みのできる小僧さんをやといたいという話でした。お坊さんが友吉のことを、そのお店に伝えると、是非雇いたいということでした。がんばれば、お金もいっぱいくれるそうです。そこで、友吉は、町のそのお店で働くことになりました。

  友吉と別れてから、あっという間に数年が経ちましたが、その間、友吉からは連絡がありませんでした。でも、おばあさんはいつも友吉の無事を祈って、毎朝、友吉のいる町に向かって「友吉や、元気かぇーっ」と言っています。

  そんなある日、友吉からの手紙がきました。おばあさんは、大喜びです。 でも、字が読めません。そこで、字の読める人を探しに行くことにしました。

おばあさん  あ、お侍さんがいる、お侍さんなら、字が読めるはず、そこのお侍さん、ちょっとってください、待ってください。これを読んでくれませんか。

お侍                 (手紙を読むふりをする)何、何、う、ううっ、これは、……。うわーん、うぇーん。

おばあさん  お侍さんが泣き出した。さてはこれは、不幸な手紙なのじゃ。ということは、間違いない、と、友、友吉が死んだのじゃ。うわーん、うぇーん。

商売人    どうしたのじゃ、二人とも泣いて、あ、思い出してしまった、去年の今日わしの大切な皿を割ってしまったことを、わしも悲しくなってきた、うわーん、うぇーん。

子ども1   はよ、逃げないと鬼につかまる(泣いているおばあさんにつまずいて)いたーい、いたーい。

子ども2   見つけ、そりゃっ、タッチ。(屁をひるようにけつを出す)

子ども1   おぇ、おぇ、うぇ、うぇ、おぇーん。(変な顔を子ども2の顔に近づけ泣き出す。)

子ども2   (その顔にびっくりして)うわー、びっくり、うぇーん。

 みんな大泣きです。そこへ2人組の人がやってきました。

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12.すってもむいでも

ダイキ創業者、さんが本年度、西条市名誉市民になられました。西条市名誉市民に選ばれる人とはどういう人でしょうか。ちょっと知りたくないですか。

今、起こっていることでも10年たてば、記憶が薄れ、100年たてば、忘れられてしまうことが多くあります。でも、でも過去に起こったステキな話、学べる話があるのならそのことを記録に残し、10年後にも100年後にも伝えていくってとても素晴らしいことだと思いませんか。

西条市のみんなの暮らしを、愛媛県のみんなの暮らしを、日本のみんなの暮らしをよくしようと努力した西条市出身の先人もいます。

自分の力だけでなく自分のことを信じる仲間の協力で、周りを動かし、やがては多くの人に信頼され感謝される、そういう人の生き方を紹介したいと思います。

今日、紹介する人こそダイキを作り上げたさんです。ここからは劇の都合上、登場人物は全て呼び捨てにさせていただきます。お許しください。

大亀孝裕は西条市丹原町来見に生まれました。自然豊かな穏やかで、話好きで心の温かい人が多く見られる地域です。

愛媛県の職員となり、5年が経ちました。妻の家の法事に大阪から親戚にあたるが妻の実家にやって来ます。丹司得蔵は、アサヒといって、トイレや洗面台等を作る会社の専務をしています。その丹司がその場で寂しそうに独り言を言います。

「うちの会社の製品をできれば、私と関係の深い愛媛県で売りたいなあっ。でも、それが叶わないか、悔しいけど仕方が無い。ほんとは誰か親戚で代理店をやってもらいたいけど。」

 寂しそうにつぶやく声が大亀の頭に残りました。

 代理店というのは、その会社に代わって、その地域でその会社が作った商品を売る店のことをいいます。

 そんなある日のこと、同じ県庁職員の小西鶴夫に大亀は相談を持ち掛けました。

大亀  小西君、聞いてもらいたいことがある、ちょっと、相談に乗ってくれ。

小西  何の相談かな、僕に出来ることかな。

大亀  時々思い出すんだ、あの紫雲丸事件のことを。

小西  大亀君、あの時、いろいろ大変だったんだろう。

大亀  うん、あのとき、死にたくないこれから未来に生きるはずだった小学生が死んでいくことが現実に起きてしまった、生きたいのに生きられなくなってしまった人間の無念を聞いたり見たりした。世の中であれほどつらいことはないように思う。でも、時が経てば、何事もなかったように日々の暮らしが始まっている。あの悲惨なことも忘れられていく。そして、いつものように県庁の職員として朝8時30分に来て、夕方5時30分に帰る。上司に言われたことやしなければならないことをして帰る。  毎日毎日、それの繰り返し、それでいいのかという思いがこみ上げてくる。僕は、したいと思うことや自分で考えて、もっと人のためになることをしたい、いや、しなければいけない、そういう思いがこみ上げてくるんだ。

小西  でも、公務員には、それはできない。

大亀  自分が考えて、自分が行動してみんなの暮らしをよくしたい、そのために一生懸命働きたいと思っている。

小西  天下の県庁職員、しかも出世コースを歩んでいる大亀君が。安全な道を捨ててまでか、どうやって。

大亀  実は嫁の親戚がトイレや洗面台等の衛生陶器を作っている会社の偉いさんなんだ。その会社の特約店になろうと思うんだ、どうだろう。

小西  うーん、確かにそれはいい考えだと思う、これからは、くさい便所から新しい便所にかわる気がする。また、かわらないといけない気もする。でも、その特約店と取引が続かなければ、どうなる、取引がなくなっても大丈夫か、そうだ、もう一社、トイレ、洗面台と関連する会社の特約店になり独立したらどうだろう。そのことで一社の特約店よりも確実に仕事が増えると思う。

大亀  それらに関連するもの、何がある、何がある、そうかそうだ、タイルだ、タイルはそれ以外にも用途がある、台所にも使う、外壁にも使う、まさに万能だ、いい 助言になった。

小西  大亀君なら、頑張れば道は開けると思う、期待しているよ、大亀君。

大亀  うん、「意志あらば道通ず」だ。すってもむいでも頑張る。ありがとう、小西君。(二人、手と手を取り合う。)

 こうして大亀はトイレ、洗面台等を作るアサヒ衛陶、そしてタイルメーカーであるの特約店となり、独立の道を歩むようになりました。

 大亀が使っている「すってもむいでも」という言葉を知っていますか。周桑地方の方言で自分が決めたことはどんなに苦しくてもやり遂げるという意味があります。

 少しずつ、順調に行き始めた頃、大亀が目をつけたのが、でした。その当時の便所について説明します。便器の下は大きなセメントでできた水槽みたいなものでした。 それが便槽です。出されたものが便槽にたまる構造になっていました。何ヶ月に一回、そのたまった汚物をバキュームカーという特殊な車で汲み取ります。

 その当時の便所はくさいだけなく、蛆虫と言って、ハエの幼虫が住み続け、とても不潔でした。

大亀   まだまだ便所は、あまりにくさいし汚い。

社員1  私もそう感じています。

大亀   幼い頃、うちの家は、家の外の納屋に便所があった。夜便所に行きたくなったら、暗がりなのにそこまで歩いて行かないといけなかった。しかもくさくてたまらなかった。そういうことをなくし、これからは明るい便所にしたい。

社員2  くさくないトイレ、明るいトイレ。

大亀   汚水を処理できれば、汲み取りでなく、水洗化できる。

社員3  それが実現できれば、きれいな便所が出来る。

大亀   しかも、便槽の工事が簡単になれば大工さんは助かる。

山崎   社長、従来のセメントで便槽を作る発想をやめ、もっと軽い物で。

大亀   そうか、山崎、君もあの素材がいいと思うか。

山崎   はい、ガラス繊維強化プラスチック、軽くてしかも丈夫。

大亀   できないものをできるようにする、すってもむいでもの精神で一つ作ってみるか。

こうして、便槽に変わるもの、浄化槽作りが始まりました。

大亀   どうじゃ、浄化槽の形にするための型は、できたか。

社員4  木型で作りました。

社員5  でも、押しても引いても木とガラス繊維強化プラスチックが離れません。

社員6  空気を送り込んで木型と製品を離そうとしたら爆発しました

社員7  だめなんです。

社員8  もう、無理です。

大亀   それがだめなんじゃ、すってもむいでもあきらめるな、そうじゃ、木以外でやってみんか。

社員9  すぐ作ってみます。

大亀   うん、頑張れ。(立ち去る。)

大亀   どうじゃった、できたか。

社員10 だめでした。

社員11 できません。

社員12 できないんです。

大亀   あきらめるな、あきらめたら終わりじゃ。すってもむいでもやり抜くんじゃ、頑張っていこ。

社員13 はい。

社員14 社長。

社員15 社長、ついについに。

社員16 できたんです。

社員17 ついにやったんです。

社員18 まだまだ十分ではありませんが、完成しました。

大亀   よくやった、よくやった。  

やがて試行錯誤しながらも、浄化槽作りが成功します。そして、現在、改良に改良を加えた浄化槽は、日本一高い場所、富士山頂測候所にも設置されています。

一つのことが軌道に乗ると、次の事業を考え、すってもむいでもの精神でやりとげる、それが大亀の強い意志です。

今、役員会が行われ、ホームセンターに進出するか話し合われています。

社員19 私は反対です。私たちには、店で物を売った経験はないじゃあないですか。

社員20 そんなに、いろいろな物を大量に仕入れたこともない。

社員21 本当に儲かるかどうか分からないものには近づかない方がいいと思います。

社員22 やったことがないのにうまくいくはずがありません。

社員23 それにオイルショックが重なり、あまり物が売れる時代ではありません。

社員24 私も反対です。

社員25 私も反対です。

社員26 私もです。

社員27 うーん。

大亀   それがいかんのじゃ、やる前から何でもだめと決めつける。今までもわしらはいろいろな困難を克服してきたじゃあないか。浄化槽も作れたじゃあないか。  わしらはできる、わしらならできるんじゃ。そう、思わんか。山崎、全国のホームセンターを見て回って、気づいたことは。

山崎   はい、ホームセンター事業について報告します。全国のホームセンターを回ったのですが、広い駐車場があり、店内も活気がありました。日曜大工の品々、  そして園芸植物、スーパーとは違った魅力があります。

大亀   他に気づいたことは。

山崎   全くの新しい取り組みなのでスーパーマーケットからの参入はないと思われます。新しい事業が今始まったように思われます。

大亀   新しい事業だから、誰でもやってみるのが怖くてちゅうちょする、人がちゅうちょしている間に広げていく。どうじゃ、一つわしらで挑戦してみんか。

社員28 なるほど考えを変えれば、チャンスかもしれません。

社員29 そうか、これはチャンスじゃ。

社員30 できるように頑張ったらええだけじゃ。

社員31 社長、やりましょう。

社員32 私も社長について行きます。

社員33 社長の考えに反対でしたが、お考えを聞くことでよく分かりました。やりましょう。(お互いにうなずき合う。)

大亀   最初に手を上げた者がどこまでも広げていく、新しい戦国時代の始まりじゃ。

社員34 なんか、わくわくしてきました。

社員35 みんなで頑張ろう。

大亀   よし、やるか。

社員たち (お互いに握手をするなど工夫した演技をする。)

 思い立ったら、すってもむいでもやろうとするパワーはすさまじいものがあり、社内の多くの反対を押し切り、決断しました。

 決めたら躊躇なく、即実行、これが大亀のすごさです。

 松山市内に2店舗、同時出店、2店舗出すことで、他の事業者が松山にホームセンターを出しにくくなりました。それからは破竹の勢いで快進撃です、今では九州地方、中国地方、関西地方にも積極的に出店しています。

2003年、ダイキの社長になった山下雄輔から直接聞いた言葉を思い出します。

「大亀社長には本当に感謝しております。転職し、入社したのですが、非常に大事にしてくれました。おかげで30代の時には、もう取締役でした。大亀社長のすごいと 思うところは、一年に一つは新しい事業に挑戦し、即実行する、こればかりは誰ばりできません。」

みんなが誉め称える大亀の人柄がにじみ出るエピソードを紹介したいと思います。

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続きは、お問い合わせください。

13.おおかみと七ひきの子やぎ

げきは おもしろく 楽しい

じぶんが 楽しく演技すれば

見る人にも 楽しみが伝わる

劇はクラスみんなで 楽しみながらつくる

楽しい劇を つくるぞ

おー

                                        

  グリム童話にある有名な「おおかみと七ひきの子やぎ」を改作しました         

  

4年 名前(                )

1 ずっと、ずっとのです。あるところに1ぴきのお母さんやぎがいました。

2 お母さんやぎには、七匹の子やぎがいました。

3 お母さんやぎはとても優しいやぎで、どの子も大切にしました。

4 ある日のこと、お母さんやぎは、森に行って、おいしい食べ物を見つけようと思いつきました。

母やぎ 私の大切な子やぎ、全員集合。

子やぎ1 メエー。

子やぎ2 メエー。

子やぎ3 メエー。

子やぎ4 モー。

子やぎ5 モーは牛、私たちはパオーよ。

子やぎ6 パオーは象。

子やぎ7 メエー、とにかく7匹、全員集合しました。

母やぎ  お母さんは、これから、森においしい食べ物を取りに行くけど、お母さんがいないと大変なことが起きるかもしれないから気を付けてね。

子やぎ1 大変なことって。

子やぎ3 それは、いいこと、悪いこと。

子やぎ4 (よだれが出そうに)おいしいこと。

母やぎ  そんな考えじゃあ、いけない。もっとしっかりしてもらわないと。おおかみよ、おおかみが食べに来るかもしれないのよ。

子やぎ6 誰をー。(きょろきょろする。)

母やぎ  あなたたち、みんなに決まってるでしょ。

子やぎ5 びっくり。

子やぎ4 お母さん、ぼくまだ死にたくない。

母やぎ  だったら気を付けてもらいたいことを言うね。

子やぎ5 教えて。

母やぎ  うちの中に入れてはいけない、うちの中に入ると、ぱっくり、ひと飲みよ。上手に姿を変えて、あなたたちをだましにかかる、でも、正体は分かる。だって声はしゃがれているし、手足は真っ黒だから、じゃあね、おいしいものを見つけてくるから。

子やぎたち 行ってらっしゃい。

子やぎ7 お母さん、僕、こわい、もしうちに入ったらどうしたらいいの。

母やぎ  においに気を付けて、おおかみは、においをかぎつける天才、においを出さないところに逃げるの、でも、大丈夫よ。さあっ、行って来るから。

子やぎ7 行ってらっしゃい、においを出さないところに逃げるって、そんなこと本当にできるかな、まあ、いいや、行ってらっしゃい、やぎ語でいえばメエー。

母やぎ  あたしもメエー、メエー。もう一つ、メエー。(立ち去る)

おおかみ お母さんやぎが行った、いってくれた、しめしめ。(戸を叩く。)かわいい、食べたくなるほど、ジュルジュルジュル、よだれがでちゃった。食べたくなるほどかわいすぎるぼうやたち、お母さんが帰ったよ、開けとくれ。

子やぎ6 開けるはずはないでしょ、そんなしゃがれた声、それに今出発したのに、なんでもう、帰って来る、だからあなたはおおかみでしょ。

おおかみ たいさーん。

 おおかみは、いろいろな物を売っているお店に行きました。そこで、声をよくするのどあめを買いました。それからすぐに、やぎの家に突進しました。

おおかみ ぼうやたち、開けておくれ、みんなの大好物持って来たよ。ほら、ほらっ。

子やぎ1 うそ言うな、窓から見えるお前の手、真っ黒じゃないか。お前はおおかみだ。

おおかみ またばれたか、たいさーん。

5 おおかみは、パン屋さんに走って行きました。そこで、手にパン粉をこすりつけてもらいました。それからこな屋さんのところへ行き、白い粉をふりかけてもらいました。

6 おおかみは、またまたやぎの家に行って、とんとんと上品に戸をたたきました。  

おおかみ かわいすぎる、ジュルジュルジュル、よだれがでちゃっうほど、とても食べたくなるぼうやたち、こんなにいっぱいおいしいものを取ってきたよ、開けとくれ。

子やぎ3 手を見せて。

おおかみ どう、この美しすぎる手。

子やぎ5 本当に白くてきれい。

子やぎ2 お母さんの手だ、お母さんの手だ。

子やぎ4 入って、今、戸を開けるから。

子やぎ7 ちょっと待って、ちょっと待ってお母さんが自分の手を美しすぎるとは言わないよ。

おおかみ もう、遅い。ふ、ふ、ふ、だまされたわね。さあっ、一匹残らず食っちゃうぞ。

子やぎ1 机の下に隠れちゃえ。

子やぎ2 ベットの中に隠れよう。

子やぎ3 暖炉の中なら分からないと思うから隠れちゃおうと。

子やぎ4 台所なら気づかれないぞ。

子やぎ5 戸棚の本の中に隠れちゃえ。

子やぎ6 洗濯物に紛れるために、洗濯だらいに隠れちゃえ。

子やぎ7 においを出さないところに隠れるって、そうだ、柱時計の中ならにおいは出さないぞ。

おおかみ いくら隠れたっても、においですぐ分かる、くんくん、一匹目、ごっくん。二匹目、見つけ、ごっくん。三匹目、ごっくん、四、五匹めもごっくん、ごっくん、ついに六匹目もごっくん。クンクン、もうどこからもにおわない。大きな木の下の草原で寝転がるか、うっしっし。

8 おおかみが出ていった後、しばらくしてお母さんやぎが帰ってきました。

母やぎ あら、おおごと、戸は、開けっ放し、机が椅子が腰掛がぐちゃぐちゃ。洗濯だらいは、めちゃめちゃ。だあれもいない、ジェームズ、ワシントン、スティーブ、

アレックス、ポーリー、トミー、かばのすけー。

子やぎ7 (弱弱しい声で)お母さん、ここだよ、柱時計の中だよ。

母やぎ 良かった、今出してあげるから。

子やぎ7 お母さん。(抱き合う。)

母やぎ 何があったの、言って。

子やぎ7 おおかみがやって来て、みんな食べちゃった、おおかみは、大きな木の下の草原で寝転がると言ってたの、聞いたよ。

母やぎ 大きな木の下の草原って、どこだろう、あっ、分かった、あそこだ。

9 二人と言おうか、二匹は、いそいでおおかみのところへ行きました。

母やぎ おおかみが見える、様子を見てみましょ。

おおかみ ごえっ、びえっ、ぶえっ。(大いびきをかいている。)

母やぎ おなかが動いている、ひょっとして丸呑みしたんだわ、だから、おなかのなかで、

生きているんだわ、でも、早く助けないと死んじゃう。かばのすけ、急いで、家にある針とはさみと糸と手術着を持って来て。

子やぎ7 分かった。

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14.命を救った健精丸

昔の人なら誰でも知っていたことが、時代が移ることによって忘れ去られ、いつの間にか誰も知らなくなる。そういうことは多くあると思います。

  皆さんは、うそだと思うかもしれませんが、今から六十年以上も前の子どもの頭にはいっぱいできものがあったということ、冬には子どものそでが鼻水をふくためナメクジが通った後のように光っていたこと、それも事実なのです。

 それだけではありません。今では簡単に治る病気も不治の病といって、治らない病気もあったのです。病気が進むと、亡くなってしまうこともありました。病気にかかった人の中には、家族に、そして人に迷惑をかけたくないということで、故郷を離れ、四国八十八カ所のお寺参りの旅に出る者もいました。四国八十八カ所のお寺参りの旅に出る者のことをお遍路さんと呼びました。

  今から話す話は二百年前の江戸時代の終わり、西条市北条新田のとある村で実際にあった話です。

  この村にも、治らない病気のため、四国八十八カ所のお寺参りをしているお遍路さんが、やって来ることもありました。

「いたい、うっ、苦しい。」

 そう言いながら、一人の重い病気にかかっているお遍路さんが道に倒れてしまいました。こういう場合の多くは、そのまま身元が知れぬまま亡くなってしまうことがありました。

 しばらく経ち、お遍路さんが目を覚ますと、布団の中にいることに気づきました。立ち上がろうにも立ち上がれず、やっと起きあがったときには、この家の太衛門が現れました。

「やっと目が覚めたか、死ぬんじゃないかと、ひやひやしとった。さあっ、ぬくいもんでも作るようにするから、しばらく寝 とけ。」

  太衛門がそう言い終わったとき、お遍路さんが言いました。

「わたしが泊まると、迷惑がかかるかもしれません。この病気が、恐ろしい病気が、うつるかもしれない。」

「かまん、かまわん、まあっ、そんな心配せんでええから。」

 お遍路さんを寝かしつけ、そう言い残すと、部屋から消えてしまいました。

  しばらくすると、この家のよねが温かい料理を持って現れました。

「どうぞ、そまつなものですが、食べてください。」

  ゆっくりと起きあがろうとするお遍路さんを支え起こし、食べ物を口へ運びました。

「ありがとうございます。」

 お遍路さんはそう言うと、一口、一口かみしめるように食べました。

「こんな心のこもった料理は久しぶりです、ありがとうございます。」

「ゆっくり休んでください、元気が出るまでここにずっといてください。」 

 お遍路さんのその目から自然と涙がこぼれ落ち、止まりませんでした。

 次の日も次の日もお遍路さんの調子が悪く、あまり起きあがることができませんでした。

  四日目の朝でした。

  お遍路さんはゆっくりと起きあがることができました。

「調子は良さそうじゃないか。」

 その姿を見て、太衛門はうれしそうに言いました。

「今まで本当にありがとうございました。」

「かまわん、かまわんぞ。そんなこと。心配せんでええっ。いくらでもおったらええっ。」

「元気が出てきたので、少しこのあたりを歩いてみます。」

 お遍路さんは、近くの野原から五種類の草を見つけ、家へ持って帰ってきました。そして家族を集め、お遍路さんは言ったのです。

「今までありがとうございました。この集めた五種類の草は薬草です。まずこれをゆっくりじっくりいぶします。次にいぶし たものをよくかわかせます。かわいた薬草を持っていますので、それをつかって実際にやってみます。」   

 お遍路さんは、どうしたらよいのかよく分かるように、ゆっくりと何度も教えました。

「そうして、この五種類の薬草をよく混ぜ合わせながら、すりつぶし、粉にします。最後にこれを飲みやすいように団子に するために、この粉をつけ練っていきます。これでできあがりました。しばらく干すと完成です。」

 こうして、お遍路さんは飲み薬の作り方や付け薬の作り方まで教えたのでした。

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